「世界一強力なX線レーザー」が1000億円以上の大規模アップグレード
さまざまな分野での活用が期待される
LCLS-II-HEは、2030年までにアップグレードが完了する予定ですが、早ければ実験は2027年に開始される可能性があります。 LCLS-II-HEの開発によって、非常に多くの分野での科学的研究の進歩が期待されています。この装置が生成するX線は、分子レベルの極小のスケールで起こる反応を鮮明に観測し、それらに対するより深い洞察を得られるようになるでしょう。 Dunne氏は直近のLCLSのビームタイム使用状況について述べた中には、材料工学、触媒化学、天体物理学、原子・分子・量子に関する科学、核融合、生物科学などがあり、これだけでも幅広い分野をカバーしていることがわかります。 アップグレードされたLCLSによって得られる恩恵は、エネルギー供給網や宇宙に関する理解、コンピューターやインターネットなどなど、私たちの生活にまつわるほとんどの分野で受けられることになるでしょう。さらに、アップグレードにより、マシンラーニングやそのほかのAI・人工知能による手法を用いて加速器を調整することでパフォーマンスが向上し、生成されたデータを分析するとのこと。これにより、大量のデータが生成され、その量は1秒あたり約2GBから1秒あたり約1,000GB以上に跳ね上がることになります。 このデータ量とその処理についてDunne氏は以下のように説明しています。 データ量について具体的に説明すると、典型的なオンラインムービーは約1GBなので、1秒間に1,000本分のムービーに相当するデータの処理をリアルタイムで実行することになります。 この処理は、いうなれば1,000本のムービーのすべてのフレームをちょっとした変化までを調べるようなものです。 これを対処するために、そのなかから重要な情報を抽出し、データを可能な限り圧縮できるインテリジェントデータシステムを開発しているというわけです。 原子レベルで世界や宇宙のあらゆる面を分析すると、1日あたり1ペタバイトを超えるデータが生成されるそうです。そのすべての情報を管理するための計算システムが必要になるということです。 先述のようにLCLS-II-HEの完成はまだ先ですが、数年のうちに強化されたX線自由電子レーザーが使用可能になる予定とのことです。あらゆる分野のあらゆるものの解像度が上がり、研究がどんどん進歩していく、そんな未来がもうすぐやってくるかもしれないということです。
ヨコヤマコム