群雄割拠のバンタム級戦国時代に現れた超新星。ボクシング界の"ミライモンスター"・伊藤千飛(せんと)に注目!
伊藤は今回の試合前、10月13日にWBC世界フライ級王座決定戦を控える寺地拳四朗とのスパーリングを経験した。フライ級の拳四朗に対して伊藤はバンタム級。階級はふたつ違うものの、長らく世界の最前線で活躍し続ける拳四朗と拳を交えた経験は、プロ2戦目で異例の抜擢となったセミファイナル、そして初の8回戦に向けて大きな自信に繋がった。 「拳四朗選手はめっちゃ強かった。フェイント、ワンツー、ステップイン、どれもすごく速い。特に左ジャブの回転が見えなくて、左ジャブからの右ストレートのワンツーを、顎に何発もまともに食らってしまいました」(伊藤) 一方、胸を貸した拳四朗も、 「現段階でも世界レベルで戦えるだけの実力はあると思います。自分自身も次の世界戦に向けて良い練習になりましたし、若い選手から良い刺激をもらいました。将来的に、世界チャンピオンを狙えるだけの実力は十分あります」と高く評価した。 目標とするボクサーについてたずねると伊藤は、 「井上尚弥選手に憧れています。もっとパンチに磨きをかけて、井上尚弥選手のように1発で相手をKOできるようなボクサーになりたい。そのためにも、もっと自分を追い込んでいかなければと思います」と答えた。 伊藤が憧れるモンスター井上尚弥は二十歳の時、当時日本人男子最速となるプロ6戦目で世界王座獲得に成功した。しかし山下会長は「焦らず、しっかりと段階を踏みながらキャリアを積ませたい」と冷静な答え。このあたりはさすがプロ20戦目、24歳で世界初挑戦して王座獲得、その後WBC世界バンタム級王座10防衛、3階級制覇、そして世界王者のまま35歳で引退した長谷川穂積を育てた名伯楽らしい考え方に思えた。 「しばらくはバンタム級で戦いたい」と伊藤は話す。世界主要4団体すべて日本人が世界王者(中谷潤人、井上拓真、武居由樹、西田凌佑)で盛り上がるバンタム級の覇権争いに、近い将来絡んで来るのか。一ボクシングファンとして注目していきたい。 ■伊藤千飛(いとう・せんと) 2005年6月25日生まれ、19歳。兵庫県伊丹市出身。元キックボクサーだった父親の影響で5歳からキックボクシングを始める。キックボクシング時代からパンチのみで戦うスタイルで、「関西ジュニア最強のキックボクサー」と呼ばれた。高校入学と同時にボクシング転向。興国高校ボクシング部に所属し、選抜2冠、アジアユース選手権3位入賞。卒業と同時に山下正人会長率いる真正ジム入門。今年4月のプロデビュー戦では1回55秒KO勝利を飾った。プロ戦績2戦2勝2KO。 取材・文・撮影/会津泰成