ダルビッシュ有が独占告白 大谷翔平とPS初激突なら「僕はうれしいですね」
ドジャースの大谷翔平投手(30)がメジャー7年目で初のポストシーズン進出を決め、パドレス・ダルビッシュ有投手(38)との対決が注目されている。そのレジェンド右腕を人気コラム「メジャー通信」でおなじみの青池奈津子氏が独占直撃。ダルビッシュは世界一を争うライバルでありながら後輩の大谷に金言を贈るだけでなく、ドジャース時代の苦い記憶を思い返しながら大舞台での初対決に意欲を燃やした。 【写真3枚】山本由伸は深々おじぎ、大谷もリスペクトするダルビッシュ 「日本の時もポストシーズン(PS)だったら経験してると思いますし、WBCもポストシーズンのようなものなので。あれを見てても、今(9月の活躍を)見ててもそうですけど、たぶんあんまり普段とパフォーマンスは変わらない。それによって落ちるとかは思わないので、逆に気持ちが高ぶって調子が上がりそうな気はしますけど、僕は」 ドジャー・スタジアムで9月26日(日本時間27日)に行われたパドレス最終戦のダッグアウトで、ダルさん(と呼んだことはないのだが、親しみを込めてそう記させてほしい)が残してくれた「大谷翔平初のPSはどうなると思うか?」に対する言葉だ。 他の選手たちも語る同じ見解をとてもストレートに表してくれていると思った。その前には自身の初体験についても聞いたのだが、ダルさんは「メジャーでは1年目だったので、ワイルドカード1試合のゲームで投げたんですけれども、まだルーキーでしたし、すごい選手たちばかりだったので、緊張するとかそういう間もなく投げていたのは覚えています」と話してくれた。 12年前のその試合はオリオールズとのワンゲーム・プレーオフで、7回途中まで奮闘するも味方打線が援護できず、レンジャーズは1回戦敗退。「もうあまり覚えていないですね」と申し訳なさそうな顔をしたが、ある意味で彼が清算できた思い出なのかなと思った。 そして次の言葉に心をひどく揺さぶられた。 「思い出深いって言ったらなんですけど、記憶に残るのは、やっぱりドジャースの時のワールドシリーズですね。2017年の。やっぱりすごく苦い、苦しい思い出だったので、自分としても家族としても。いいものあんまり覚えてないもんなんですよね、野球している人って。だからそれは覚えていますね」 あの日を、私も覚えている。静まり返るスタジアム。漏れるため息。「まさか」という現実への強い拒絶反応。ダルさんの悲痛な表情。その後に発覚するアストロズの不正…(※)。 いろんな場面が脳裏をよぎり、切れ味のない質問をしてしまったのだが、ダルさんはペースを変えるでもなく、それまでと同じ柔和なトーンで「乗り越えるというか、やっぱりメッセージとか、ドジャースのファンの人とかもすごかったので。見ないようにはしていましたけど、街中で会ったりしてもすごい変なこと言われたりとかってのはあったので。それはちょっと嫌でしたね」。 一体どれだけ自分と向き合ったら、突然声をかけてきた記者に、当時の胸中をこうも穏やかに語れるのだろう。いつからか彼がまとうオーラが変わったことは感じていたが、力みのない心地良い強さを前に自然とある思いが湧いた。 「PSでダルさんが再びこのドジャー・スタジアムで投げるのを見たい」。投げて、あの日の思い出が塗り替わる瞬間を見たい。それはきっと、どんな結果であってもかなう気がする。 可能性があるのは今年の地区シリーズ。決まれば大谷選手との対決もある。 ダルさんは後輩のPS初出場に「本人(大谷)がずっと昔から『ヒリヒリするような9月を過ごしたい』みたいなことを言っていて、エンゼルスで自分が活躍してもなかなか(PSに)行けないという中で、やっとこうやってドジャースに来て出るので。本人がやっぱ一番楽しみにしている。そういう意味で僕はうれしいですね、それがかなうということが」と祝福の言葉を述べた後、ほほ笑みながら「そうですね。対戦してみたいですね、ああいう舞台で」と言ってその場を後にした。(続く) ※世界一への使者として2017年7月末にレンジャーズからトレードで加入し、アストロズとのワールドシリーズで2試合に先発。第3戦は1回2/3を6安打4失点、第7戦も1回2/3を3安打5失点と炎上し、ドジャースは世界一を逃した。ダルビッシュはバッシングを浴びたが、アストロズが本拠地の外野に設置したカメラでサインを盗み見し、打者に球種を伝えていた疑惑が浮上。大問題に発展した。
青池 奈津子