5歳6カ月で小児がんで亡くなった長女。一変した家族の生活を救ってくれたのは「グリーフケア」との出会いだった【脳幹グリオーマ体験談】
沙紀ちゃんを亡くして、何も考えられない日々
沙紀ちゃんがお空に旅立ってから、理絵さんは周囲との連絡を絶ちました。 「今、振り返ればあのときの私は、心にかたくふたをしていたような感じでした。心配してメールやLINEをくれる友だちには『心配してくれてありがとう。元気になったらまた連絡するね』と返信するのが精いっぱい…。自分たち家族と世間との間に大きな隔たりを感じてしまい、自分たち家族だけ取り残されたような気持ちになり、周囲の人とおつき合いができませんでした」(理絵さん) そんな理絵さんの心を支えてくれたのは、息子と愛犬の存在です。 「‟つく”とは、沙紀が治療を受けていた地で出会いました。そこでは楽しい思い出もたくさんあり、陽子線治療を選んだことにまったく悔いはないです。そしてつくのお母さんにひょんなことで会いに行くことになったときに、ブリーダーさんに『つくの妹が生まれたけど見る? 同じパパ・ママ犬から生まれる子は、この子が最後よ』と言われました。それを聞いて、つくの本当の妹である‟うらり”を家族に迎えることを決めました。 うらりは、元気で甘えん坊でなんとなく沙紀に似ているんです。つくとうらりがじゃれて遊んでいると、長男と沙紀が仲よく遊んでいたことを思い出します」(理絵さん)
沙紀ちゃんが旅立ってから2年がたち、知人のすすめでグリーフケアを学ぶ
心にぽっかり穴があいたような状態で看護師の仕事を続けていた理絵さんですが、グリーフケアと出会います。 「沙紀が亡くなって2年ぐらいがたったころ、知人から『グリーフケアって知ってる? 今の理絵さんにとっていい学びになるんじゃないかな? 』と言われたんです。沙紀が亡くなって3カ月ほどで訪問看護の仕事を始めたのですが、それは働いているほうが哀しみにふたができたし、沙紀が私に残してくれたこと、教えてくれたことを無駄にしたくないという気持ちが大きかったためです。 また沙紀は元気だったころ『ママのお仕事、応援するね』とよく言ってくれていたんです」(理絵さん) グリーフケアは大切な人やものを失った悲嘆を抱える方に、同行者として寄り添う支援です。 「しだいにグリーフケアを学んで仕事に活かしたいと思うようになり、日本グリーフ専門士協会の講座を受けようと思いました。グリーフケアを学んだら、私自身も何か変われると思いました」(理絵さん)