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2020年の「目覚め」を描いた、都市の詩 ホセ・パルラ「The Awakening」

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多数の線で構成された、抽象的なイメージ。グラフィティが書かれた壁のようにも見えるし、正統派な抽象画にも見える。作者のホセ・パルラは、ニューヨーク・ブルックリンを拠点にするアーティスト。天王洲のユカ・ツルノ・ギャラリーで、個展「The Awakening」が開催中だ。 ホセ・パルラの作品は、カリグラフィーと何層も重ねられたレイヤーが特徴。それらは、彼のダンスのような身振りから生み出される。その表現は、カリグラフィーを描いた作品が有名なサイ・トゥオンブリーや、ドリッピングで抽象画を描いたジャクソン・ポロックと比較されることもある。このような戦後絵画の抽象的な伝統を更新しながらも、彼の作品には、独自のストリートの感性が反映されている。 文字のようなモチーフが描かれていたり、カラフルに色が重ねられたパルラの作品には、グラフィティを彷彿とさせるものがある。ストリートアーティストのJRとコラボレーションしたこともあり、都市は彼にとって重要なモチーフになっているようだ。ニューヨークのワン・ワールド・トレード・センターやバークレーセンターに描いてきた巨大な壁画の数々には、様々な出来事の痕跡や質感が織り込まれ、集合的な記憶が重ねられる都市の壁のような性質をもっていると言える。 キューバ人の両親のもとマイアミで育った出自もあり、パルラはアイデンティポリティクスや移民問題から生まれる軋轢といった多文化的な状況を、彼自身が生きる歴史や記憶、経験を解釈しながら作品に込めてきた。今回の展示では、アメリカを中心に世界中に広がる社会の動乱とその変化を経験しながら制作した新作絵画を発表する。 本展にあたりパルラが書いた詩には、警察によって起こされた暴力や社会に根強く残る構造的な人種差別主義を目の当たりにした経験とともに、レゲエ・シンガーのジミー・クリフ『ハーダー・ゼイ・カム』が引用されるなど、移民たちの歴史や抵抗の文化、現在進行形で引き起こされる不平等な扱いなどが織り交ぜられている。 新型コロナウイルスによって世界的に不安定な状態が続き、ブラック・ライブズ・マターのような大きな動きも生まれた2020年は、すでに歴史的な年になりつつある。パルラが向き合ってきた「都市」に響く、異なる物語の歴史と現在。彼が身を以って感じた都市が織り込まれた絵画は、この2020年を見つめ直す機会を与えてくれるだろう。 以上画像すべて (C) the Artist, courtesy of Yuka Tsuruno Gallery ホセ・パルラ 1973年にキューバ人の両親のもとマイアミに生まれ、10歳より絵を描き始める。サバンナ美術大学とニューワールド・スクール・オブ・アーツにて学び、現在はブルックリンを拠点に活動。大規模な常設作品でその名を知られている。2015年には、ニューヨークのワン・ワールド・トレード・センターのロビーに記念碑的な壁画『ONE: Union of the Senses』を制作。その他、有名な壁画プロジェクトとしてノースカロライナ州立大学の『Nature of Language』やバークレーセンターの『Diary of Brooklyn』(2013年)などがある。作品は世界各国で展示されており、現在はブロンクス美術館(NY)にて個展が開催中。最近の個展に、ハイ美術館(アトランタ)、HOCA Foundation(香港)、SCAD美術館(サバンナ)、Bryce Wolkowitz Gallery(NY)、Ben Brown Fine Arts(ロンドン)、ハバナ・ビエンナーレ(ハバナ)などがある。 ホセ・パルラ「The Awakening」 会場: ユカ・ツルノ・ギャラリー 住所:東京都品川区東品川1-33-10-3F 会期:開催中:12月19日 時間: 火~木、土 11:00~18:00、金 11:00~20:00 休廊: 月、日、祝 柴原聡子 建築設計事務所や美術館勤務を経て、フリーランスの編集・企画・執筆・広報として活動。建築やアートにかかわる記事の執筆、印刷物やウェブサイトを制作するほか、展覧会やイベントの企画・広報も行う。企画した展覧会に「ファンタスマ――ケイト・ロードの標本室」、「スタジオ・ムンバイ 夏の家」など

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