道長のまひろへの想いが溢れ出た瞬間に鳥肌…ラスト1話で大河ドラマ『光る君へ』が届けたいこととは? 第47話考察レビュー
吉高由里子が主演を務める大河ドラマ『光る君へ』(NHK総合)。平安時代中期を舞台に紫式部の生涯を描く。大宰府で刀伊の入寇に巻き込まれたまひろ。一方、朝廷では、撃退した隆家たちへの褒賞をめぐり対立が起きる。今回は、第47話の物語を振り返るレビューをお届け。(文・苫とり子)【あらすじ キャスト 解説 考察 評価 レビュー】 【写真】柄本佑”道長”から”まひろ”への愛があふれる…貴重な未公開カットはこちら。 NHK大河ドラマ『光る君へ』劇中カット一覧
周明(松下洸平)の生存を望む人続出
太宰府で周明(松下洸平)と再会を果たし、再び心を通わせるまひろ(吉高由里子)。だがその矢先、刀伊の入寇に巻き込まれ、敵の攻撃により目の前で周明を失うという悲劇が襲う。 悲痛な叫びを上げながら、周明のもとに駆け寄るまひろだが、このままここにいては危ないと判断した乙丸(矢部太郎)に引きずられるようにその場を後にした。前回の放送後にX(旧Twitter)では、「#周明の生存ルートを考える会」というハッシュタグが誕生。多くの人たちが一縷の望みをかけ、周明が生き残る道を探ってきた。決して登場回は多い方ではなかったが、それだけ視聴者に愛されていた証拠でもある。 しかし、その希望も虚しく周明は息を引き取った。遺体が回収されたわけではないが、公式サイトに掲載されているキャストインタビュー動画『君かたり』で、松下が「周明の最期を演じて」の思いを明かしていることからも、周明が亡くなったことは疑いようもない事実だ。まひろが去った後、周明の頬に一筋の涙が伝う。その涙には哀しみだけではなく、乙丸に連れられていくまひろを見て、ホッとした気持ちもあったのではないだろうか。 それと同じように、周明は単に日本と中国という2つの国に翻弄された悲劇的な人物として描かれていたわけじゃない。まひろとの交流を通じて、言葉や文化は違っても心と心を通わせられるということ、思いやりや愛情も持てるということを、周明を演じる松下がその身で体現していた。
乙丸(矢部太郎)の機転と優しさ
また第47話は、周明が前回訴えたように、まひろの人生がまだ終わっていないことを実感するエピソードでもあった。 周明と別れた後、大宰府の政庁に戻ってきたが、悲しみが癒えないまひろに隆家(竜星涼)は「周明のことは無理に忘れずともよいのではないか。 ここで菩提を弔いたければ、ずっといてもよい」と寄り添う。 それはまひろにとっては何よりもありがたい言葉だったが、刀伊は隆家率いる武士団に撃退されたものの、またいつ体制を整えて襲ってくるかわからない状況。それでも太宰府に留まろうとするまひろに、乙丸は「お方様!私はきぬに会いとうございます!」と訴えかける。 まひろが「ならば乙丸だけお帰りなさい」と突き放しても、乙丸は言うことを聞かず、「お方様も一緒でなければ嫌でございます!」「きぬに会いたい!お方様と帰りたい!」と絶叫。幼い子供のように駄々をこねるその姿は側からみるとおかしいが、本人にとっては切実だ。 なぜなら、乙丸は目の前でちはや(国仲涼子)を失った過去があるから。従者として何もできなかった後悔を、乙丸は以前まひろに語ったことがある。だから、今度こそまひろを絶対に守り切りたかったのだろう。 だけど、どれだけ自分を大事にしてほしいと言っても今のまひろには通じない。そこで一世一代のわがままを発動し、まひろに仕方ないと思わせた乙丸の機転と優しさに心が暖かくなった。