東京都予算(上)「ダイバーシティ」待機児童解消や高齢者施設整備に注力
4月1日から執行された本年度の東京都の予算は、一般会計が7兆460億円(前年度比1.3%増)。2年ぶりに7兆円台の大台に戻り、特別会計、11の公営企業会計と合わせた予算総額は14兆4440億円に上りました。これはスウェーデンの国家予算を超えます。 【写真】都民のアイデアを都の予算に反映 「森活用した保育」など9事業8.5億円 このように、一都市として突出した規模を誇る都の予算ですが、今回の編成には一体どのような特徴があるのでしょうか。小池百合子知事が掲げた「ダイバーシティ」「スマートシティ」「セーフシティ」という3つの「シティ」実現へ向けた予算を中心に、どのような施策に力を入れているのか、3回に分けてみていきます。1回目は「ダイバーシティ」です。
「ダイバーシティ」とは?
そもそも「ダイバーシティ」とは何でしょうか。都の予算概要の副題には「誰もがいきいきと生活できる、活躍できる都市・東京」とつけられています。 具体的には、「子供を安心して産み育てられる環境の整備」(1847億円)として、保育士の人材確保などの待機児童解消対策、「高齢者が安心して暮らせる社会の実現」(841億円)として、特別養護老人ホームの整備補助や介護人材の確保策、「医療の充実・健康づくり等の推進」(182億円)として、受動喫煙防止対策の推進や在宅・救急医療の充実策などを盛り込んでいます。
●待機児童解消
小池知事が「最重要課題」と再三強調する「待機児童対策」。これまで、都は待機児童の解消に向けて、認可保育所など保育サービスを提供する施設の受け入れ能力を増やしてきました。ただ、それと同時にサービスの利用を希望する保護者も増加。2016年4月からの1年間で、サービス利用者の数は1万6003人増えたのにもかかわらず、待機児童の数は8466人から8586人と増えました。 2017年4月時点で、都の就学前児童約64万人のうち、保育サービスの利用申込者は約43%にあたる約28万人でした。都は今後、保育サービス利用の希望者の数が50%に達する可能性があると見込み、2017年度から2019年度までの3年間で保育サービスの受け入れ能力を約6万人増やして、2020年4月に待機児童ゼロの実現を目指します。 予算では「待機児童解消に向けた取り組み」に前年度から195億円増の1576億円を計上。「保育所などの整備促進」(334億円)、「保育人材の確保・定着の支援」(338億円)、「保育サービス利用者支援の充実」(904億円)が3本柱で、これらを通じて2018年度は2万1000人分の受け入れ能力を拡大する方針です。 中でも目玉は、新規事業として50億円の予算を組んだ「ベビーシッター利用支援」です。この事業ではベビーシッターの利用料を最大8分の7補助します。対象は0歳から2歳の子どもがいる家庭で、保護者が子どもの保育所が決まるまで働く場合か、1年間の育児休暇の後に復職して保育所を申請した場合に利用できます。補助額はひと月で最大28万円。都によると、都内でベビーシッターを1日8時間、月20日利用した場合の平均利用料は約32万円で、この場合、支援を受けることで自己負担は約4万円で済む計算になります。ただし、160時間を超える分については補助がなくなり、自己負担です。 都民からは「いつ開始するのか」などの問い合わせが都に対して複数寄せられているといい、都は今後、区市町村や業界団体との調整やベビーシッターの人材育成などの準備を経て、2018年度後半に事業を開始したいとしています。