【小児科医が解説】中学受験で「関係にヒビが入る親子」と「絆を深める親子」の決定的な違い
それなのに多くの親御さんは、受験する前から子どもに「公立中学は良くないから私立を受けようね」と、選択肢を潰し、公立中学がいかにダメかを吹聴している。それでは自分も子どもも苦しくなるに決まっています。さらには、親のほうが「全部落ちたら地獄だ」「ママ友からどんな目で見られるかわからない」「私のプライドがへし折られる」などと思い込んでいる。子どもを自分の小道具に使ってしまっている悪例です。 子どもの受験は家庭生活外の問題です。つまり親のあなたと我が子の受験はまったく関係がないのです。それなのに、子どもの合否と自分のプライドを一体化し、共依存に陥っている。それこそが大きな問題だと思います。 ● 「失敗力」の育成は 将来必ずプラスになる 中学受験に臨む親が押さえておくべき基本のスタンスは、 (1)子ども自身が「この学校は楽しそうだから行きたい」と前向きに言っている、 (2)塾代や授業料を出せる経済的余裕がある、 (3)落ちたら公立に進むことも折り込み済み、 (4)子どもの合否は親の私とは関係ない、 この4つです。これらを心得ていないと、親子関係にトラブルが起きてきます。
今、首都圏でいえば、多くの私立中学があり、どんな子でもピッタリくる学校が必ず見つかると言えるほどです。親が塾の言いなりになり、偏差値だけを見て難しい学校を目指させるのをやめて、学校の勉強プラスアルファくらいで入れて子どもが本当に楽しくニコニコ過ごせる学校を探すようにすれば、中学受験はそんなに大変なことにはならないはずです。もちろんそれでも落ちる可能性は折り込んでおき、合格できたら「よかったね」と言って入ればいい。 中曽根陽子さん(編集部注/教育ジャーナリスト。マザークエスト代表)もおっしゃっていますが、「失敗力」も子どもの人生にとっては非常に大事です。頑張って勉強したけれど受験に失敗したとしても、その失敗体験は必ずその子の将来にとってプラスになります。 そのためには親御さんが、我が子の不合格を自分事のように落ち込んだりせず、「いい勉強になったね。今回の経験はきっと今後活かせるよね」と笑顔で前向きに伝えること。 こころの脳が育ちつつある子なら、そう言われれば自分なりに反省して、「うん。確かに、最後の追い込みが足りなかったと思うんだよね。だから高校受験のときはもう少し早めから勉強するようにするよ」など、次の目標にさえ言及するかもしれません。