【小児科医が解説】中学受験で「関係にヒビが入る親子」と「絆を深める親子」の決定的な違い
首都圏の2024年度受験者数が6万5000人を超えるなど、中学受験への関心が高まり続けている。目標に向かって親子で協力する必要がある中学受験だが、親の過度な期待やプレッシャーにより、親子関係に亀裂が走ることも少なくないようだ。子どもが潰されないために、親が絶対に持っていなければならない「覚悟」とは?※本稿は、成田奈緒子『中学受験の落とし穴――受験する前に知っておきたいこと』(筑摩書房)の一部を抜粋・編集したものです。 【この記事の画像を見る】 ● 「自ら一人旅に出る子」に 育てるのが親の務め 私が親御さんによくおすすめしているのが、一人旅です。 実際に自宅から60キロメートル離れた町まで自転車で旅をした中学生、1人で青春きっぷの旅をする高校生の話も聞きました。いずれも親御さんから「子どもが旅に出たいと言っているんですが、心配で。大丈夫でしょうか」と相談を受けて、「信じよう、頑張って」と背中を押した人たちです。 やはり道中いろいろと困ることが起き、見知らぬ人に「助けてください」と言わざるをえない局面もあったようです。そこで親切な人に助けてもらったりして、見違えるほど成長して帰ってきたと言っていました。学校では決して学べないことをたくさん学んだのではないかと思います。こころの脳(編集部注/論理的思考と問題解決能力を司る前頭葉)が、さらにぐんと成長したことでしょう。 そうした意味で、一人旅は大変おすすめです。高校生くらいになったら1人で海外に出してみるのもいい。ものの見方が大きく変わり、視野を広げるチャンスです。親の方にもそれなりの勇気や覚悟、諦めが必要ですが、我が子の意外な一面を見ることができるでしょう。
一方で、「怖い」と言って海外に行きたがらない子も最近は多いようです。家から出たくない、一人暮らしなんてしたくないという大学生も増えていますが、やはり年頃になったら喜んで一人旅に行きたいと言える子、親から離れたいと思う子に育ててやるのが、親の務めだと思います。 親と離れたくないというのは不安の証拠。過干渉な親が何から何まで先回りしてお膳立てしてきたために、社会に出たら自分は生きていけないのだという感覚、自信のなさを刷り込まれてしまっているのです。自分は大丈夫、どこへ行ってもやっていけると自信を持っていれば、フットワーク軽く出ていけるはずです。 ● 脳をフル回転させる家事は 絶好の脳トレの機会になる たしかに親といれば安心かもしれませんが、一方で口うるさいし、やらなきゃいけないことがたくさんある。それよりは、親から離れて自由に自分の世界を築きたいと思うのが、若者の自然な心理です。 共働きの我が家では、娘が幼い頃から、ペアレンティング・トレーニング(編集部注/子どもが主体的に行動できるように、親が行動や意識改革をして子どもの脳にいい刺激を与えていく方法)の一環として、家事の役割分担を徹底していました。