[純烈 酒井一圭さん]右脚の骨折 入院中に見た夢…そこには直立不動で歌う大物歌手
一病息災
有名人に、病気や心身の不調に向き合った経験を聞く「一病息災」。今回は、歌謡グループ「純烈」リーダーの酒井一圭(さかいかずよし)さん(49)です。 【写真4枚】酒井一圭さん 「逆転あばれはっちゃく」「百獣戦隊ガオレンジャー」からムード歌謡グループ結成まで
戦隊ヒーローからスーパー銭湯アイドルへ
〽君しか見えない……。そろいのスーツに身を包み、長身を揺らしながら、甘く切々と恋心を歌う。 戦隊ヒーロー出身の俳優を中心とするムード歌謡グループ「純烈」のリーダー。現在は白川裕二郎さん(47)、後上翔太さん(38)、岩永洋昭さん(44)との4人組だ。 9月中旬、4人が公式アンバサダーを務める温浴施設「花景の湯」がある植物園「HANA・BIYORI(はなびより)」(東京都稲城市)でライブが行われていた。新曲「夢みた果実」や懐メロの「星降る街角」などをテンポ良く披露。客席に下り、ファン一人ひとりと握手する「ラウンド」が始まると、会場は歓喜に包まれた。 「人と人が身近に接することが大事だと思っています」。結成以来、各地の温浴施設や市民会館などで地道な活動を積み重ね、「スーパー銭湯アイドル」と呼ばれてきた。現在も年間300回以上の公演をこなす。 2010年にデビュー。長い下積みを経て、今やNHK紅白歌合戦に6年連続出場を果たすほどの人気ぶりだが、「純烈はまさに『けがの功名』で生まれたんですよ」と笑う。 芸能生活が危ぶまれるほどの大けがをしたのは、07年4月、都内で自主製作の特撮ヒーロー映画を撮っていた時。ジャンプシーンの撮影で、1メートルほどの高さから飛び降りた瞬間、右足首に違和感を覚えた。すねに痛みが走る。「あ、折れた」。そう直感した。
役者は断念か
映画の撮影中に右脚を骨折した。「純烈」を結成する前、役者をしていた31歳の時だった。 「そもそも小さい頃から活発で、よく骨を折っていました」。幼少期に患った椎間板ヘルニアの影響で右脚がわずかに長く、バランスを崩しがちだった。足首をひねって骨折したこともある。だが、今回ばかりは程度が違うようだった。 病院に運ばれると、医師に「手術をしても、今まで通りに歩けるかわからない」と言われた。飛び降りるシーンで右足首を脱臼し、すねの骨に亀裂が走り、砕けるように折れたらしい。 歩けなくなったら、役者は続けられない――。目の前が真っ暗になった。 芸能界のキャリアは10歳の時から。子役として5代目「あばれはっちゃく」を演じ、20代でスーパー戦隊シリーズ「百獣戦隊ガオレンジャー」に出演した後は、俳優仲間とイベントを企画するなど、プロデュース業にも取り組んでいた。結婚し、子供はまだ小さい。 「いったい何ができるだろう?」。ベッドの上で自問し続けた。 「そんな崖っぷちの時に見た夢で、思いもよらない人と出会ったんです」 入院中は、痛みを和らげるため、モルヒネが投与された。寝たり起きたりの中で夢に見たのは、スモークのたかれたステージに立ち、直立不動で歌う男性の姿。「あれは……前川清さん?」 翌日も、その翌日も、前川さんは夢に現れた。