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英中銀、300年ぶりの大不況だが「V字型回復」とリポート

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【経済着眼】EU離脱のマイナス効果 楽観すぎると批判も

 イングランド銀行(英国中央銀行)は定例の金融政策レポートを公表した。  ちなみに英国はコロナウィルスの死者数が3万人を超えて米国に次ぐ世界第二位となっている。同レポートで、英国経済は実質GDPが今年上半期に30%を超えるマイナスとなる300年ぶりの大不況に陥る、との見通しを明らかにした。  イングランド銀行では今年第一四半期が3%のマイナス成長となったあと、コロナウィルス感染防止を狙った都市封鎖の影響が全面的にでてくる第二四半期には25%のマイナスとなると見通している。したがって上半期では30%のマイナス成長となり、年後半に都市封鎖が解除されるとしても年間で14%程度のマイナス成長と1930年代の大恐慌をも上回り、1709年の大寒波(過去500年で最も寒い冬であったと伝えられる)以来の大不況に陥るとしている。  個人消費はコロナウィルス感染が広がった3月上旬から現在にかけて30%ほど縮小している。例えば4月中の新車販売台数は97%減、わずか4,321台(前年4月 161,064台)であった。雇用面を見ると、ジョンソン政権による雇用維持策の導入にもかかわらず、今年の失業率は9%と2008~2009年のグローバル金融危機を上回る水準となる見通しである。  インフレ率も2020年には0.5%まで落ち込み、2022年になってようやく上振れて目標値の2%を回復する見通しである。  同時にイングランド銀行では英銀が貸し渋りを起こせば、経済情勢はさらに悪化する、と警告している。もともと銀行監督部門の責任者であったイングランド銀行のベイリー総裁は「貸し出しの引き揚げは企業倒産の増大を生み、それが銀行の引当て償却の増大につながるという悪循環を作り出し、銀行自身が打撃をこうむることになる」と力説している。  今回見通しの特徴は、今年が記録的マイナス成長となるものの、来年には15%のプラス成長とV字型回復を遂げる、とみていることだ。失業率も9%から2023年には4%以下に低下すると見通している。ベイリー総裁は「2008~2009年のグローバル金融危機の時に経験した深い景気後退と比較すると、かなり素早く景気は回復する」と述べている。  イングランド銀行はコロナショック対策として、3月に国債を2,000億ポンドまで買い入れるという量的緩和の拡大措置を打ち出した。その後、イングランド銀行は、国債買い入れを毎週135億ポンドのペースで実施しており、2,000億ポンドの上限枠に達するのは7月上旬になる。  市場筋の見方としては6月ではなく8月の決定会合まで現状維持のスタンスであろう、と予想している。そして8月には国債以外に買い入れ対象を広げるかもしれない。企業部門のキャッシュフローが1,900億ポンドの赤字と平常期の二倍以上の水準に達しているため、イングランド銀行としては英銀が貸し渋りせずにこのキャッシュフロー赤字をファイナンスすることを後押しする必要がある。  イングランド銀行が2021年には景気がV字型に回復する、という楽観論を示していることには異論も多い。一つには英国のEU離脱の効果を甘く見ているのではないかという疑念である。英国とEUの離脱交渉はECのバルニエ首席代表が「英国はもっと真剣に取り組むべきだ」と苛立ちを示していたように遅々として進んでいない。  来月には12月末の離脱期限を延長して交渉を続けるか否かを決めねばならない。いわゆる合意なき離脱の可能性も大きい。12月末に離脱した場合でもカーニー前総裁が指摘していたように、ブレグジット(英国のEU離脱)後、英国経済には長期にわたって下押し圧力が働くことも忘れてはならない。  さらに、企業倒産や失業の増大がもたらす心理的な悪影響を軽視しているきらいもある。不況色が濃くなっている時に消費者も企業も必要以上にマインドが委縮してしまい、将来不安から過剰貯蓄に陥る恐れを指摘するエコノミストも多い。またベイリー総裁自身が指摘しているように、銀行が不良資産の拡大を恐れて貸し渋りを起こすことも可能性も高い。  マクロ経済的には貸し渋りという行動が悪循環を加速させるということはわかっていても自己の資産保全のために行動するのは金融機関経営者にとって当然のことである。シティーのエコノミストの多くは、こうした諸要因を織り込むと、経済活動がコロナウィルス感染の拡大におちいる前の2019年末の水準に戻るのは容易ではない、と指摘している。

俵 一郎 (国際金融専門家)

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