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深セン市が中国初の個人破産制度導入へ「誠実かつ不幸」な起業家の再起を支援

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東方新報

【東方新報】中国・広東省(Guangdong)深セン市(Shenzhen)で、中国初の「個人破産条例」が4月から審議入りした。日本の自己破産制度にあたり、早ければ年内にも制定される。事業が破綻しても債務者の責任の範囲を明確にし、早期に廃業して再起を図るようにする。「中国経済の先端実験区」である深セン市で個人破産制度が軌道に乗れば、いずれ中国全土で法制化されるとみられる。  中国は2006年、産業の新陳代謝を図るため企業破産法が制定された。個人破産も検討されていたが、「債務者の踏み倒しを追認することになる」という反対があり実現しなかった。このため法曹界や産業界の間では「未完の破産法」「半分破産法」ともやゆされた。  ではなぜ今、深セン市で個人破産制度が導入されようとしているのか。深セン市は世界有数のスタートアップ(起業)の集積地だ。通信機器大手の華為技術(ファーウェイ、Huawei)や電気自動車大手の比亜迪(BYD)は深センを拠点に成長し、今もドローン世界大手の大疆創新科技(DJI)などが本拠を置く。現在、深セン市で登記する企業は約330万社を数え、このうち個人企業は3分の1強の123万社。若く新しい発想を持った技術者や起業家が集まるが、当然、時宜を得ずに失敗する者も多い。中国政府は中国経済をけん引するエンジンとしてスタートアップ企業による技術革新に期待しており、失敗した起業家を早期に廃業させ、次のステージに向かわせるための「退場メカニズム」として個人破産制度を必要としている。深セン市は1980年に中国初の経済特区に指定された都市で、1993年には国の企業破産法制定よりも13年早く、全国に率先して企業破産条例を制定している。個人破産制度でも、トップランナーの役割を担おうとしている。  中国では金融機関が企業に融資する際、経営者や親族の資産を担保に求めることが多く、倒産した場合も個人の責任とする傾向が強い。また、法的義務を果たさなかった者を「失信被執行人」というブラックリストに入れる仕組みがあり、会社が倒産して債務が払えない責任者もそのリストに含まれる。最高人民法院によると、失信被執行人は中国全土で1千万人を超えている。このリストに入ると、「実名を公開する」「飛行機、列車の1等寝台に乗れない」「子どもは学費が高額な私立学校に入学できない」など数多くのペナルティーや制約がある。こうした「一度の失敗で一生の制約を負う」現状を改善するため、個人破産制度が必要とされている。  もちろん、個人破産制度には異論も出ている。その最たるものは「債務者の逃げ得を認めることになる」という意見だ。中国には「老頼」という言葉もある。「老」は「ベテラン」、「頼」は「踏み倒し」の意味で、「踏み倒し常習犯」を指す。事業が破綻して裁判所が債務の履行命令を出しても、返済を拒否したり姿をくらましたりする事例は後を絶たない。  ただ、国全体で個人破産制度を導入する流れは変わりがない。中国の経済政策を取りまとめる国家発展改革委員会は2019年夏に、個人破産制度を盛り込んだ改革方針を打ち出している。深セン市の条例制定は中国政府の意向を受けているのは確実で、中国メディアは「個人破産は『誠実にして不幸な債務者』のための制度である。『老頼』を見逃す道具ではない」と繰り返し強調している。若き起業家のため、中国経済の発展のため、個人破産制度は今後、中国社会に広がっていくとみられる。(c)東方新報/AFPBB News ※「東方新報」は、1995年に日本で創刊された中国語の新聞です。

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