<高校野球>「代替策の検討を」「過剰に反応しすぎ」センバツ中止、識者に聞く
11日に開かれた第92回選抜高校野球大会の臨時運営委員会で、大会の中止が決まった。識者に聞いた。 【写真特集】センバツ中止決定に涙を見せる球児たち ◇高校生にとって苦渋 代替策の検討を 名古屋大大学院の内田良准教授(教育社会学)の話 大会の中止は、現時点では最善の判断だったと受け止めている。そもそも部活動は教育の中では付加的なものだ。文部科学省が授業の自粛(休校)を要請しているにもかかわらず、付加的なものであるはずの部活動の大会を開催するのは説明がつかない。また、他の競技の大会が中止になっている中で、高校野球だけ開催してしまうことは「特権」になってしまうのではないか。今回の一連のスポーツイベントの中止は、高校生にとって苦渋のもの。(後日開催などの)代替策を検討する価値はあると思う。 ◇中止はどう考えても「アウト」 過剰に反応しすぎ タレントのデーブ・スペクターさんの話 中止はどう考えても「アウト」。甲子園はオリンピックと違って高校の3年間しか出場のチャンスがない。それにどんな強豪校でも、次に出るなんて保証はない。選手たちにも「出られなかった」というしこりが一生残ると思う。「甲子園」は日本にしかない伝統あるもので、(世論は)過剰に反応しすぎではないか。野球はほかのスポーツと違って接触も少ないスポーツで、しかも今回は無観客での開催を準備していた。(感染症などの)専門家を呼んで、何らかの対策をして開催できたのではないか。出場できなかった選手たちには、何らかの配慮をしてほしい。 ◇「次に切り替えて夏を目指すしかない」 監督で歴代最多となる甲子園68勝の高嶋仁・前智弁和歌山監督の話 (感染状況が)いい方向に向いていないので、この状況での中止は致し方ない。むしろ、日本高野連や主催者は何とか開催しようと努力し、ここまで(判断を)引っ張ってくれた。感謝している。(高校3年間で)1度しか甲子園に出られない子もいるだろうから、かわいそうだとは思う。(孫が今回出場予定だった智弁和歌山の選手で)残念だが、こればかりはどうしようもない。(選手たちは)気持ちの動揺もあるだろうが、こうなったら次に切り替えて夏(の甲子園)を目指すしかないだろう。 ◇学校は休校 課外活動の継続に問題 中澤篤史・早稲田大准教授(スポーツ社会学)の話 中止の決定を支持する。学校が休校になっている中で、課外活動である部活動を継続することに大きな問題があった。野球だけ開催ありきで議論が進んだのは部活動の肥大化を象徴している。2011年の東日本大震災後の選抜は入場料収入の一部と募金を義援金として被災地に送り、一定の理解も得られた。だが、今回開催していたら感染のリスクを増やすだけだった。今後は出場校の選手たちのフォローが重要になってくる。 ◇感染防止策を取れば、無観客開催に問題なし 東海大の金谷泰宏教授(公衆衛生学)の話 選手のことを考えるとやらせてあげたいが、日本は感染拡大を防ぐためにゆるゆるな対応ではなく真摯(しんし)に取り組んでいることを示すのは重要だ。感染防止の対策を取れば、無観客で開催することに問題ないと考えていた。公共交通機関を使う場合には生徒を4、5人に分散して移動させたり、宿舎は1人1部屋にしたりと、不特定多数が長時間密集している状況を作らないことが大事だった。万が一感染者が出た場合も、保健所や病院と連携をしっかり取っていれば怖がることはないが、この段階では中止にせざるを得なかったのではないか。