巧妙化する“スマホのみ販売拒否” 「完全分離」「上限2万円」は健全か?
総務省は6月22日に「競争ルールの検証に関するWG(第33回)」を開催した。このワーキンググループは、2019年10月施行の改正電気通信事業法で整備された通信料金と端末代金の完全分離、行き過ぎた囲い込みの是正のための制度によって、携帯電話市場の競争環境にどのような影響があったかを評価・検証するために開催されている。 【画像】量販店でのスマホ販売の手口 第33回では、このワーキンググループが取りまとめる「競争ルールの検証に関する報告書2022(仮称)」の内容の方向性が引き続き議論された。
単体販売拒否の手法が巧妙化
通信料金と端末代金が完全分離され、通信契約とセットで端末を購入する場合の値引きは上限2万円までに制限されている。しかし、端末の単体販売の場合は値引きに上限はない。また、キャリア各社が提供している端末購入サポートプログラム(ドコモの「いつでもカエドキプログラム」やauの「スマホトクするプログラム」など)は、自社ユーザー以外も利用できる。つまり、例えばソフトバンクユーザーでもドコモやauの端末を購入することができる。 しかし、20年の覆面調査では、店頭での非回線契約者に対する端末単体販売を拒否する事例が見られた。そこで「競争ルールの検証に関する報告書2021(報告書2021)」では、ドコモやソフトバンクなど、MNO3社に対し是正を要請。各キャリアも店舗スタッフの再研修や販売マニュアルの見直しを行って、正確な説明や周知の徹底に努めるとしていた。 今年22年の調査では、昨年と比較して全体的に改善傾向とのことだ。端末購入プログラムの提供拒否は各社ともかなり減ったようだが、まだ違反と判断される事例はある。例えば「セット販売用の在庫であり、単体販売用の在庫はない」と説明するなど、単体販売拒否の手法が巧妙化しているという。 2万円の上限を超える値引きについては、昨年の調査では確認されなかったが、今年の調査では多く確認されたという。具体的には、単体販売は行うものの、割引が適用されないという説明がなされ、割引が実質的に回線契約を伴うものとなってしまっているという事例だ。つまり、2万円以外の値引きも回線契約とのセット購入が条件となっており、「上限2万円」が守られていないということになる。 そこで対策として、ワーキンググループでは単体購入用とセット購入用での在庫を区別しないこと、端末単体購入価格を明示することを提案している。端末の価格について、セット購入価格と単体購入価格の字の大きさに差を付けずに併記することや、まずは単体購入価格を表示し、セット購入時の追加的な割引を記載する、といった方法が提案されている。 もちろんキャリアは、販売代理店に対する研修や指導の徹底、販売の現場で不適切な行為が行われていないかをチェックすることが求められている。ただ、現状、販売代理店に対する手数料・奨励金や評価指標が、ユーザー獲得重視に偏り過ぎていて、上限2万円規制違反を助長するような形で設定されているのも問題としている。 なお、販売拒否の問題については、各社の株主総会で、株主からの質問という形で取り上げられていた。キャリアの社長や役員が謝罪し、是正する旨の回答があった。