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なぜ「ノストラダムス」は日本人の心をとらえたのか? 大ブームの正体

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現代ビジネス

五島氏があぶり出したもの

 五島氏の『ノストラダムスの大予言』が絶妙だったのは、四半世紀後という近くも遠くもない未来にタイムリミットを設定したことだろう。その間、第三次世界大戦も含め、何が起きるのかは誰にもわからず、様々に想像をめぐらすことができるのだ。一方、予言のタイムリミットはそのままノストラダムスの賞味期限でもある。 ---------- 『1999.8.18ノストラダムスの謎をインターネットが解いた! 』二見書房、1998。 『ノストラダムスの極秘暗号:コンピューターが読み解いた衝撃のメッセージ』廣済堂出版、1998。 ----------  1冊目はインターネットという言葉が正しく使われているのかが若干不安であるが、これらは、当時、一般に広まりつつあったPCやネットとノストラダムスを結びつけた新機軸と言えるだろう。そして、1999年になるとノストラダムスは方々から別れを告げられ、ついには存在しなかったとまで言われてしまう。 ---------- 『さらばノストラダムス:西洋錬金術で解読するノストラダムスの世界』たま出版、1999。 『さよならノストラダムス』文藝春秋、1999。 『ノストラダムスよさようなら:予言は当たらない』明窓出版、1999。 『ノストラダムスはいなかった』オーシャンライフ、1999。 『すごいぜ!! ノストラダムス』メディアファクトリー、1999。 ----------  しかし、同年もっとも重要な書籍は『ノストラダムス予言集』(P・ブランダムール校訂、高田勇・伊藤進編訳、岩波書店)だ。  同書は、フランス文学の専門家が、当時の文脈の中にノストラダムスを位置けて解説したものだ。同書によって、ノストラダムスはオカルト的予言者ではなく、フランス・ルネッサンスの詩人の一人としてとらえ返されたのである。  五島本以前、ノストラダムスに言及したものはわずかしかないが、実は、最も早い渡辺一夫『ルネサンスの人々』(鎌倉文庫、1949)は、上記のような文脈でノストラダムスを論じていたのである。  ノストラダムスの予言は、ノストラダムスによってではなく、後世の解釈者たちによって創造された。五島氏は、16世紀フランスの詩人を通じて、石油ショックやバブル景気に翻弄された20世紀後半の日本人の未来への漠然とした不安と期待をあぶり出した作家なのではないだろうか。

岡本 亮輔(北海道大学准教授)

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