24時間耐久、総合V 水戸の自動車チーム「ヘルム」 S耐シリーズ優勝へ弾み
水戸市を拠点とする自動車のレーシングチーム「HELM MORTORSPORTS(ヘルム・モータースポーツ)」が、富士スピードウェイ(静岡県小山町)で4~5日に開かれた24時間耐久レースで総合優勝を果たした。9クラス56台が出走する中、最速の「ST-X」クラスを制覇。チーム発足3年目で最長レースの最速を勝ち取り、「この優勝は大きい」と喜ぶ。スポンサーとメカニックに日産自動車の地元ディーラー2社(同市)が加入。序盤の優勝で念願のシリーズ王者に勢いが付いた。 レースは「スーパー耐久シリーズ」第2戦。全7戦の一つだが、国内唯一の24時間耐久は注目度も獲得ポイントも大きい。最上位の「ST-X」クラス制覇は総合優勝となる。レースは3日間延べ3万8千人を超える観客を集め、インターネットで中継された。 ヘルムのドライバーは4人で構成。中心となる平木湧也さん(25)、玲次さん(24)の兄弟=同市出身=のほか、鳥羽豊さん(58)=東京都=と助っ人のショウン・トンさん(26)=中国・香港出身=が交代で走行した。 給油やタイヤのメッセージボードなどピットワークは、地元ディーラーの茨城日産自動車と日産プリンス茨城販売から20代のスタッフ4人が務めた。 ドライバーは1人当たりの走行制限など多くのルールが課せられる。一方、マネジャーやエンジニアらピット陣はレース前も含めて1日半ほど「寝ずの番」だ。作戦指揮や燃費計算、データ解析のほか、いつ緊急ピットインがあってもいいように気を張る。 スタッフを送り出した茨城日産自動車サービス部の吉成裕二部長(58)は「力があるチームで経験し、意識と意欲をもらっている」と感謝する。レース参加は整備スタッフの人材育成などを主眼に置くものの、地域密着を掲げるチームの一員として優勝を喜ぶ。 レースは4日午後3時にスタート。「ST-X」クラスは5台が出走し、ヘルムの日産GTR-GT3は8時間が経過した午後11時台まで首位争いを演じた。だが、ドライバーの連続運転時間超過でピット待機3分間のペナルティーを受け、後退。最大5周差がつき、「ちょっとしたミスだが、ロスは相当大きかった」と平木兄弟は振り返る。 その後、12時間走って3周差まで詰めるも、ペースが上がらない。厳しい局面で好機が到来。残り3時間半、首位のマシンが故障でピットを出られず、その間に逆転、トップを守り続けチェッカーを受けた。 玲次さんは「最後の最後で(マシンが)壊れれば終わり。24時間コンスタントに走り続ける難しさがある」と語る。 チームは昨季、シリーズ参戦1年目で同レースの下位クラスで優勝している。大きなポイントを獲得しながらシリーズ王者を逃し、悔しさを味わった。湧也さんは「最上位クラスデビューの年に2戦目で優勝できたことは大きい」と、大願成就へ手応えを口にした。 ★スーパー耐久シリーズ 通称「S耐」。市販車ベースの日本最大級のレースで、国内のフォーミュラカー以外では「スーパーGT」に次ぐ規模。今年は全7戦で争われる。排気量などにより今季は9クラスを設定。市販車を使うため、乗用車や部品の開発の場にもなっている。主なレース時間は3時間か5時間。夜間走行がある最長の24時間は国内唯一。出走台数は年々増え、最速クラスは常に他クラスを追い抜きながら走行する。
茨城新聞社