かつての「水質ワースト湖沼」に鉄人集合! 第9回手賀沼トライアスロン、今年も元気に
8月24日午前8時10分、ホイッスルの音とともに、選手たちが一斉に抜手を切る。手賀大橋下の桟橋から北へ約150m泳いで左折、折り返しのブイを目指して白、黄色、オレンジのキャップが水面を上下する。第9回手賀沼トライアスロンのスタートだ。 スイム1.5km、バイク40km、ラン10kmの計51.5kmを競うオリンピックディスタンス。今年は個人の部328人(うち女性26人)とリレー49チームが参加した。千葉県内や首都圏各都県はもとより、遠く大阪、大分から参加した選手もいる。リピーターも多い。 千葉県北西部、柏・我孫子両市などにまたがる手賀沼。昭和30年代前半まではウナギやワカサギなど川魚漁が盛んに行われ、水鳥や水生植物の宝庫でもあった。が、高度経済成長期以降、大規模な干拓事業や急速に都市化する周辺からの生活排水により水質は悪化。1974年から27年連続で「水質汚濁ワーストワン」の汚名に甘んじた。 そんな手賀沼でのトライアスロン大会を2006年に実現したのは地域の愛好者たち。「いつか手賀沼で大会を開こうと語り合っていたんです。朝練仲間から隊長と慕われた吉田欽哉さん(柏トライアスロン協会初代会長)を中心に、思いをひとつにする人たちが集まりました」と語るのは大会事務局の垣内基さん(柏トライアスロン協会理事長)。 90年代半ば以降、下水道や浄化施設の整備など自治体の取り組みが進み、清掃活動や環境にやさしい石鹸づくりなど市民レベルの活動も相まって、水質は改善の兆しを見せていた。2000年には北千葉導水路が完成。利根川の水が浄化用水として本格的に導入されると、汚濁の目安となるCOD(化学的酸素要求量)の年平均値はピーク時の28mg/Lから8 mg/L台へと改善。アオコも悪臭も消え、トライアスロン大会の「夢」が現実味を帯びた。 県トライアスロン協会の会長でもあった吉田さんが、旧沼南町体育協会副会長の吉場幹雄さんに協力を依頼。ともに県実務者レベルとの交渉にあたった。2005年には沼の南岸を東西に走る全長9.4kmの「ふれあい緑道」が完成。懸念された水質も国が定める水浴場基準をクリア、競技環境が整った。 そして一抹の不安とともに迎えた第1回大会。遠く北海道、福岡を含む16道都県から329人のトライアスリートが手賀沼に参集した。「ぜひ来年も」と出場選手の評価も上々。以来、回を重ねるごとに大会の趣旨も浸透し、現在では幕張、銚子、館山、九十九里とともに、オリンピックディスタンスで競う県内屈指の大会となっている。