明治の大地主の屋敷「黒木清五郎邸」文化財への申請前提に改修…カフェやギャラリー、地域交流拠点に
国の文化審議会は22日、宮崎県高鍋町の「旧黒木家住宅店舗兼主屋」について、国の登録有形文化財(建造物)とするよう文科相に答申した。県全体では計110件となる。(波多江航) 【写真】地元では「ブリ御殿」と呼ばれている「日高家住宅」(宮崎県延岡市)
黒木家は明治時代に肥料製造販売などで財をなした大地主。答申された建物は、町中心部の旧街道に面し、当主の屋敷「黒木清五郎邸」として知られる。
明治中期に建てられた木造2階建で、面積は292平方メートル。2階は昭和初期に縦長の上下窓を密に配した洋風の外観に改修されている。「町内最大級の間口の町家は当地の繁栄を今に伝えており、国土の歴史的景観に寄与している」と評価された。
答申に向けて尽力したのが、古民家のリノベーション事業などに取り組む同町のまちづくり会社「マチツクル」。空き家だった建物を清五郎の子孫から買い取り、登録有形文化財への申請を前提に最小限の改修を実施。外壁は大正時代に流行した薄いピンク色だったことが判明し、塗り直した。
一方、内部は地域交流拠点として活用できるよう、カフェスペースや厨房を設置。1級建築士で、歴史的な建造物を保全活用する専門家でもある那須日出夫社長(65)は「人々の目に触れ、お金を生むことで維持管理ができる。文化財登録は建物の価値を知ってもらう良い機会。街中に人通りが生まれる拠点となってほしい」と語る。
建物は現在、木城町の社会福祉法人石井記念友愛社が所有する。今年7月には障害者の就労を支援するカフェ「せいごろう亭」がオープン。2階はギャラリーとして活用している。営業は午前10時~午後3時。日曜定休。問い合わせは同カフェ(080・6887・3296)へ。