新人の心を病ませた法人営業「カスハラ」の理不尽、取引先の「カスハラ問題」をどう乗り越えるか
「これはカスハラですよ。許されない」 建設会社の部長が憤っていた。聞けば出張の最中、突然、取引先の課長から連絡が入り「すぐ来い」と呼び出されたのだという。 【要点を図で確認】法人営業に対するカスハラ対策、抜本的な解決策は? 電話口の相手は「新人営業の態度が悪い」「正式なクレームだ」と激しい口調。新人営業がよほどのことをしでかしたのかもしれない。部長は出張の予定をすべてキャンセルし、急いで取引先へと向かった。 ■取引先が気に入らなかったこと 部長は到着するなり、取引先の課長から1時間ほど叱責されたが、なぜここまで憤慨しているのか、そのときは合点がいかなかったという。新人営業への不満は主に以下のようなことだった。
・覇気がない ・何を言っているのかよくわからない ・商品説明が下手 ・挨拶の声が小さい 確かにその新人営業は、根っから明るく、エネルギッシュなタイプではなかった。だからと言って性格は暗くないし、決して覇気がないわけでもない。ほかの取引先では、「しっかりした新人だね」と褒められるぐらいに優秀だった。 では、なぜこの取引先の課長を怒らせるような事態になったのか? もともとこの取引先は、6年ほど別のベテラン営業が担当していた。しかし事情があって退職したため、人材不足でこの新人営業に引き継ぐしかなかった。取引先の課長はそれが気に入らず、高圧的な態度をとるようになったらしい。
たとえば、その新人営業がどんなに積極的に挨拶に伺っても露骨に無視された。電話もとってもらえないし、メールの返信もしてもらえない。にもかかわらず、突然の呼び出しで商品説明をさせられたり、ムリな値引き交渉を始められたりと、やりたい放題されたという。 その結果、新人営業は心が折れ、メンタル不調で退職することになった。その後は、だれも引き継ぎたがらず、結局、部長自身が担当することになったそうだ。 「クレームをつけたいのはこっちのほうです。退職に追い込まれた新人とのやり取りを録音し、SNSで流してやりたい気持ちです」