中山美穂さん 納得できないものに抗う、凜とした美しさ 担当記者が見た14年の帰国
女優で歌手の中山美穂さんが6日、東京都内の自宅の浴室で死亡しているのが見つかった。54歳。東京都出身。警視庁渋谷署によると、中山さんが待ち合わせ場所に来なかったため事務所関係者らが自宅を訪問し、発見したという。所属事務所も公式サイトで訃報を伝えた。突然の死に日本列島は悲しみに暮れた。 【写真】中山美穂さん最後のSNS投稿 3日には笑顔も見せていたのに ◇ ◇ 突然の訃報に接して、2度の取材した機会を思い返した。 2012年10月公開の主演映画「新しい靴を買わなくちゃ」でのインタビュー。アーティスト、作家の辻仁成と結婚し仏パリに在住していた中山さんは、当時8歳の長男を育てるママだった。海外移住の理由を「穏やかに生きたかった」と語った通り、柔和にほほ笑む姿が印象的だった。 「本当に普通のお母さんです」と子育ての悩みを楽しそうにこぼしつつ、「いま、欲しいものは?」と聞くと「なにもない」と答え、「10年後の自分は?」の質問には「う~ん。変わらないと思う」と応じた。 しかし穏やかな生活は続かず、2年後の2014年には離婚が報じられる。同年4月、パリから帰国する中山さんを羽田空港で取材した。中山さんは、集まった報道陣に顔をこわばらせ、フラッシュの放列の前を通り過ぎてから、きびすを返し、「やめてもらえますか!」。大声で怒鳴った。 当たり前だが、2年前に見せてくれた穏やかな笑顔はなかった。それでも、到着ロビーに響く声に、納得できないものに抗う、凜(りん)とした美しさが垣間見え「芸能人・ミポリン」がよみがえったと感じたことを覚えている。 その後、離婚が成立し、長男の親権は父に。中山さんは日本で芸能活動を本格化させていった。テレビ番組に出演し、歌声を披露する機会も増えた。パリで実現させた「普通の生活」を失いながらも、再び輝きを放っていただけに、今後の活躍をもっと見せてほしかった。