[水沼貴史]アトレティコは超守備的布陣が裏目に チェルシー第2戦のキーマンは“マウントの代役”
2ndレグでアトレティコがすべきは……
水沼貴史です。今季のUEFAチャンピオンズリーグの決勝ラウンドが、ついに始まりましたね。先日、アトレティコ・マドリード対チェルシー(ラウンド16)の1stレグをチェックしたのですが、まさかアトレティコが[6-3-1]という超守備的な布陣を敷くとは思いませんでした。 アトレティコのディエゴ・シメオネ監督としては、直近の国内リーグ7試合連続で失点を喫していることもあり、まずは手堅く守りたいという意図があったのかもしれません。ただ、この試合では6バックのデメリットばかりが目立ってしまいました。今回は両チームの1stレグでのパフォーマンスを振り返るとともに、2ndレグの見どころについてもお話ししましょう。 [3-4-2-1]が基本布陣となりつつあった今季のアトレティコですが、1stレグの最終ラインは左からトマ・レマル、マリオ・エルモソ、フェリペ、ステファン・サビッチ、マルコス・ジョレンテ、アンヘル・コレアという並びでした。これは私の推測ですが、自陣ペナルティエリアの両脇のレーン(ハーフスペース)を徹底的に埋めるべく、シメオネ監督は6バックを選んだのではないでしょうか。 ティモ・ヴェルナーとメイソン・マウントというチェルシーの2シャドーは、今年1月にトーマス・トゥヘル監督が就任して以降、ハーフスペースへの侵入を虎視眈々と狙うプレイを見せています。シメオネ監督としては、彼らにハーフスペースを突かれ、チャンスメイクされるのを防ぎたかったのかもしれません。 ただ、1stレグに関しては自陣ゴール前のスペースを埋めることに気を取られすぎて、ボールホルダーへの寄せが甘くなってしまいましたね。アントニオ・リュディガー、アンドレアス・クリステンセン、セサル・アスピリクエタというチェルシーの3バックや、マテオ・コバチッチとジョルジーニョの2ボランチに簡単にボールを運ばれたり、サイドチェンジのパスやスルーパスを蹴られてしまう場面が度々見受けられました。必然的にチェルシーに押し込まれる時間が長くなってしまいましたし、ヴェルナーやマウントによるハーフスペースへの侵入も、思いのほか食い止められなかったというのが私の感想です。 また、元々[3-4-2-1]の2シャドーの一角であるはずのコレアが右サイドバック、右ウイングバックであるはずのマルコス・ジョレンテがセンターバックの一角に入ったことで、彼らが攻撃面で輝けませんでした。 コレアは最前線のルイス・スアレスとのパス交換が魅力的ですし、ジョレンテも本来であれば縦への推進力溢れるドリブルで攻撃に厚みをもたらしてくれる存在なのですが、2人とも最終ラインに板付き状態でしたので、カウンターの場面でも攻め上がりに時間がかかりすぎていましたね。彼らの持ち味が消えてしまったことも踏まえると、今回の6バックは失敗だったと言って差し支えないでしょう。 1stレグを0-1で落としたアトレティコが2ndレグで心がけるべきは、前線からアグレッシブにプレスをかけること。実は1stレグでもハイプレスを行えている時間帯はあり、前半1分すぎには相手GKエドゥアール・メンディのトラップミスを誘えていました。こうしたチャンスを2ndレグで何度も作れれば、逆転での準々決勝進出が見えてきます。そのためにも、守備陣形が1stレグのように後ろに重たくならないようにしたいですね。 もちろん、2ndレグで先に点を取られるとより苦しくなりますし、90分間ハイプレスをかけ続けるのは難しいと思います。シメオネ監督がどの時間帯を勝負所と捉え、選手たちにハイプレスをかけさせるのか。彼の判断が試合の鍵を握りそうです。