ロンドンの名門校は、セクハラや性的暴力の温床になっていた 国が調査に乗り出す大スキャンダル
思春期の女子生徒は、同世代の男子生徒から性的な嫌がらせや暴力にあうことが少なくない。その現状に疑問を持った女性が被害体験を共有・公開するウェブサイトを立ち上げると、1万件を超える告白が集まった。 【写真で見る】ロンドンの名門校は、セクハラや性的暴力の温床になっていた 数々のショッキングな内容はイギリスにおいて大スキャンダルとなり、国もその調査と対策に乗り出す展開にまで発展している。
1万件を超える被害報告
英メディア「BBC」によると、ロンドンの22歳の女子大学生ソーマ・サラは、友人と話していた際に、いかに多くの10代の女性がセクハラや女性蔑視、性的被害に遭っているかを思い知らされた。 それからインスタグラムで過去に自分が経験した性的被害について告白したところ、1週間で300件もの同様の体験談を受け取った。事態の深刻さに気づいたサラは、問題を明らかにするため、匿名の被害報告を公開するウェブサイト「エブリワンズ・インバイティッド」を2020年6月に立ち上げた。 そして、今年3月初めのロンドンでの白人女性サラ・エヴァラードの殺害事件を機に、女性への暴力に対する抗議運動が盛り上がり、同サイトへの投稿も急増。3月末までに1万1000件以上の体験談が公開された。告白の内容はさまざまだが、レイプにあったという体験談も少なくない。 サラは、女性蔑視とそれに伴う性的嫌がらせや暴力を当然のことのように捉える雰囲気を「レイプカルチャー」と呼ぶ。女性差別やパーティーで体を触ることなどに始まり、リベンジポルノなど画像を使ったいじめなどの不適切な行いが当然になると、レイプや性的暴行など、重大な犯罪行為にエスカレートしていくと、「BBC」に語る。 なお、同サイト上の体験談には加害者の所属する学校名が数多く記載され、イートン校などの名門私立高校や名門大学の名前などが含まれていたことから、大スキャンダルになった。
名門校に広がる女性蔑視の姿勢
英紙「ガーディアン」によると、元生徒による性的暴行の申し立ての多かった名門男子校5校は、3月後半にその被害をまとめたレポートを受け取った。100人以上から申し立てがあった学校もある。学校側は、報告されたような行動を非難し、調査して然るべき対応をとっていくとし、これまで少なくとも2つの事件がすでに警察に報告された。 なお、英紙「デイリー・テレグラフ」によると、申し立てを受けたうちのウィンブルドンにある男子校キングス・カレッジ・スクールに対し、一人の女性が公開書簡を提出した。同校の年間学費は2万ポンド(300万円程度)で、裕福な白人家庭の子供が多く通う。 書簡を出したアヴァ・ヴァキルは同地区にある私立の女子校出身だ。ヴァキルによると「性的加害者の温床になっている」という同校の男子生徒による女性差別的な行動は以前から有名で、皆知っていたと言う。「これはカルチャーの問題です。特権階級にいると言う態度、女性を尊重しない姿勢がさまざまな形で表われているのです」 ヴァキルは、同校は影響力のある地位に就く生徒を多く輩出するが、女性蔑視の態度を持った彼らが将来大きな影響力と権力を持つのは非常に懸念されると、公開書簡に記した。 同校は、性的同意を教えること、および加害行為を行った生徒を罰することを怠ったとして非難されている。ある私立高校に子供を通わせる母親は、男子生徒はポルノやマリファナ、アルコールなどの誘惑や危険に常に晒されている一方で、適切なセックスに対する教育が存在しない状況では、男子生徒が適切な行動を取れないのは仕方ないと述べる。 また、同校にもともと存在していた女性蔑視の態度がソーシャルメディアやオンラインポルノの出現によって顕在化し、学校はコントロールできていないとヴァキルは述べる。 ある公立高校の元男子生徒は、性的な画像をクラスメートの間でシェアするのがある種の文化になっていたという。誰とセクスティング(性的な画像とメッセージを送る)をしているかがクラス内での男子生徒の評価基準になった。