Yahoo!ニュース

IDでもっと便利に新規取得

ログイン

【CINEMORE ACADEMY Vol.3】プリプロダクション編 映画『宇宙でいちばんあかるい屋根』の作り方

配信

CINEMORE

映画は、どうやって「作られる」のだろうか?  映画の成り立ちを知れば、作品鑑賞はもっと面白くなる――。そこでCINEMOREでは、「CINEMORE ACADEMY」と題し、映画の作り方をクリエイターに学ぶプロジェクトを“開講”、映画製作の“リアル”をお届けする。 今回、講師に迎えるのは、『新聞記者』(19)で日本映画界に革命をもたらした俊英・藤井道人監督。9月公開予定の最新作『宇宙でいちばんあかるい屋根』を題材に、今回の映画をどのように作ったのか、詳しく伺っていく。 「企画編」「脚本編」に続く今回は、「プリプロダクション編」。撮影に入る前のスタッフやキャスト集め、ロケハンにスケジューリング、イメージ共有など、作品の方向性を定めるために必要な多岐にわたる作業の総称だ。『スワロウテイル』(96)や『キル・ビル』(04)などの製作も担当した前田浩子プロデューサーも、前回に引き続き同席する。 プリプロダクションを制すものが、映画作りを制す――。今回も貴重な裏話と、藤井監督・前田Prの信念がにじむ金言が満載。映画作りの深奥に、より踏み込んでいく。

キャスティングを左右する、配給会社と幹事会社

Q:今回は「プリプロダクション」をテーマに、脚本が出来た後、撮影に入る前にどういったプロセスを踏んでいくのか、お聞きできればと思います。前回、脚本の稿を重ねていくなかで、「並行してキャスティング・スタッフィングも動き出す」というお話を伺いましたが、決定権はどなたが握っているのでしょう? 藤井:キャスティングに関して言うと、プロデューサーが「事務所の人に見せていい」って判断した段階かと思います。『宇宙でいちばんあかるい屋根』の場合は、比較的早かったですね。 前田:今回は、とにかく藤井監督と脚本作りに着手したのが早かったこと、原作者の野中ともそさんが「すごく面白い」と言って下さったこともあって、スムーズに動けました。 藤井:ただ、キャスティングに移るタイミングって、明確なものがないんですよ。 例えば『ヤクザと家族 The Family』(2021年公開)の場合は、途中で脚本家が降りることになって……。クランクインまで3ヶ月ほどに迫っていたので、3日で初稿を書きあげて、そのままキャスティングに移りました。 Q:それは大変でしたね……。 藤井:共同脚本家の小寺和久と3日間ホテルに詰めて、一気に仕上げました。もちろん大変でしたが、結果的にすごくいい脚本が書けたんですよ。 こういったパターンもあるので時期はまちまちなのですが、手順としてはキャスティング→スタッフィングかと思います。 前田:私の場合はキャスティングやスタッフィングに加えて、「出資営業」という大事な作業があります。時には「この原作で、主演はこの人」と決まっていて出資を募っていくパターンもありますが、基本的には脚本ありき。今回は、脚本が皆さんに受け入れられたことが、キャスティングにも出資にも繋がっていったと思います。 Q:藤井監督のように、ギリギリまで脚本を直される場合もあるかと思うのですが、完成を待たずに出資営業なりスタッフィングに行くことの方が多いのでしょうか。 前田:まず映画を製作する時に、どうしても決めておきたい会社が二つあって、ひとつは製作委員会のリーダーとなる幹事会社。簡単に言えば、一番たくさん出資をするポジションです。そして、配給会社ですね。作り始めたけど、配給が決まってないっていうパターンもあるんですが、私は出口を決めないと危険だと思っています。 藤井:ちなみに『デイアンドナイト』(19)は、撮影中に配給が決まりました。決まるまではドキドキでしたね。 前田:キャスティングの際に、役者の事務所からも「配給はどこですか?」って聞かれることが多いんです。まだ決まってないですって言うと、みんな不安な顔になる。 Q:なるほど。キャスティングのお話をする時に「配給さんが決まっています」というのが、一つの安心材料になるんですね。 前田:なりますね。決まってないと皆さん「最悪、お蔵入りになるんじゃないか」とか、「いつ公開されるんだろう」とか、その辺りをすごく心配されますね。 Q:ハリウッドだと、「ブラックリスト」と呼ばれる、映画化されていない優秀脚本がありますよね。日本でも、脚本が寝かされてしまう場合はあるのでしょうか。 藤井:ありますね。あと、寝かせることが多いプロデューサーは、監督の間でウワサになります(笑)。僕らの間で、「いっぱい書かせてクランクインさせてくれない人リスト」が、共有されていたり……。 前田:そうなんだ、知らなかった(笑)。 藤井:そこはほら、プロデューサーにバレないように、こっそり(笑)。

【関連記事】