ファン獲得へ「まちゼミ」開催 大阪・千林商店街
ファン獲得へ「まちゼミ」開催 大阪・千林商店街 THEPAGE大阪
商店街の店主らが地域住民を店舗に招き入れて専門知識を伝授する「まちゼミ」が、大阪市旭区の千林商店街の随所で開催されている。受講生をあえて数名程度に絞り込み、店主と受講生が深くふれあうことで、商店街を含むまちのファンを獲得しようという先行投資型イベントだ。「千林まちゼミ」は千林商店街振興組合(加盟220店舗)が主催し、4回目の今回は21店舗が22講座を延べ53回開講。5日に始まり、10月3日まで1か月間続く。まちゼミ前半の様子を取材した。
家で飲むお茶は苦いのに、きょうは甘かった
「欧米のティータイムでは、お菓子と紅茶やコーヒーを同時に楽しみますが、日本の茶道ではお菓子を召し上がっていただいてからお薄をお出しいたします。お薄は点てた直後がいちばん美味しいですし、甘いものなどで少しお腹を満たすことで、抹茶本来の味わいが引き立つからです」 千林商店街にある加藤銘茶本舗。3代目店主加藤進さんの妻で、茶道裏千家準教授の加藤あずささんが着物姿で講師を務めている。題して「女子力UPの茶道教室」。「訪問先でお茶会が始まったらどうしょう」「抹茶を点ててみたいけれど、点て方が分からない」という女性たちの悩みを解消し、茶道を身近に楽しむための入門講座だ。受講生は6名で、母親と参加した小学4年生も熱心に耳を傾けている。 お茶席でお菓子が大きな器に盛られて出てきた場合、どのようにして取り分け、いただけばいいのか。経験がないと緊張してしまいがちな場面だが、加藤さんは分かりやすく作法を伝えていく。 全員で和菓子を味わった後、いよいよお点前に挑戦。抹茶を熱湯に溶かし込み、茶筅(ちゃせん)でかきまぜる。抹茶が泡立つと空気にふれてまろやかな味わいになるのだが、受講生がかきまぜても思うように泡立たない。加藤さんが受講生から茶筅を譲り受け、軽くかき混ぜると、数秒後にはふっくら泡立つ。 「丸くまぜるのではなく、12時と6時の方向に、手首のスナップを利かせて相互にかぎまぜてください」(加藤さん) 受講生たちがうなづいて工夫を凝らす。加藤さんの手さばきは見事なほどすばやい。加藤さんの点てるお茶は、裏千家の茶人たちの間でも「美味しい」と評判なのだそうだ。受講生たちはもういちどお茶を点て、作法や手さばきをおさらいした。 けいこを終えて意見交換タイム。「むずかしいけれど、私にもできそうな気がしてきました」「早くお茶会に出掛けたくなりました」と、手ごたえをつかんだ感想が相次いだ。 小学生女児は母親と顔を見合わせながら「家で飲むお茶は苦いのに、きょうは甘かった」と不思議そう。「きょう教えてもらった通りに、家でも試してみたい」と意気込んでいた。まちゼミは受講生にお茶の専門知識だけではなく、自信や安心、好奇心も提供したようだ。