元アイドルの女性、自死直前のSNSが波紋 中傷投稿新たな標的に、やまぬ連鎖悲しむ遺族
2020年9月30日、名古屋市中心部の繁華街で若い2人の女性がホテルの屋上から飛び降りて命を絶った。アイドルグループの元メンバーで、「月乃のあ」の名前で会員制交流サイト(SNS)やメイドカフェを中心に活動していた18歳の女性とその友人だった。SNSに活発に投稿、コンセプトカフェ(メイドカフェの一種、コンカフェ)では、チャイナ服や天使などのコスチュームを身につけてアルバイトしていたこともある。地元名古屋で今もファンを持つ月乃さんが残したSNSのメッセージが、名古屋の若者らのコミュニティーに波紋を広げ、今なお収束していない。(共同通信=美濃口正) 次はちゃんと死にます―。亡くなる3日前の27日、ツイッターに投稿した最後のメッセージ。ファンに生きてほしいと呼び掛ける一方、自身は「生きるより死ぬことの方が楽」などと絶望をにじませ「こんな形でさよならしてしまってごめんなさい」とつづった。 ▽内気な子
2002年生まれの月乃さんは愛知県一宮市で育った。小学校4年生ごろまでは自分に自信が持てない、内気なおとなしい女の子だったと、母親は振り返る。それを変えたのは隣接する稲沢市でそのころ誕生したご当地アイドルだった。 それまでアイドルといえばテレビなどを通じてしか見られない遠い存在だった。ご当地アイドルはステージを見に行けば、直接言葉を交わし握手もできる。元気がない様子の月乃さんに声をかけて励ましてくれたこともあった。 月乃さんは明るい性格になり、自分も人を勇気づけたりできるようなアイドルになりたいと思うようになった。小学校5年生からアイドル活動を開始。若い女性に人気のオーディション「ミスiD」で賞を受けたこともある。高校2年生のときに東京で活動するアイドルグループ「ヲルタナティブ」に加入した。しかし重度のホームシックに陥り、短期間で脱退した。 その後は飲食店、介護施設などでアルバイトをしながら、SNSで写真やダンス動画などを発信し、人気を集めていた。コンセプトカフェで働きだしたのは20年5月だ。