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バクテリアにも“知性”があった!? 協力しながら迷路を解くことが、研究で明らかに

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WIRED.jp

トラン・ファンの科学実験は、挑戦から始まった。上司であるプリンストン大学の物理学者ロバート・オースティンが、オースティンにつくれないような迷路をつくってみろと要求したのだ。 致死率97%の「脳食いアメーバ」が温暖化で川に増殖 もちろん、この挑戦は単なる思考実験だった。ファンは本当にヴェルサイユ宮殿の庭の迷路のような大きな生け垣を植えて、そのなかにオースティンを放り込もうというわけではなかったのである。 それでもオースティンの教えを受ける大学院生のファンは、この課題に真剣に取り組んだ。彼はまず、オースティンに簡単な迷路を解いてもらった。オースティンがどんな戦略で迷路を通り抜けるのかを知るためだ。 「先生は行き止まりに当たると、来た道を戻っていました。迷路を通り抜けるために誰でもやる方法です」と、ファンは言う。「そこで考えました。行き止まりのない迷路だったら何が起きるだろうか、とね」 ファンが描いていたイメージでは、複数の間違った道が合流してひとつの間違った道になる。このため、どれほど我慢強い挑戦者であっても、絶望の無限ループに放り込まれてしまう。「こうした迷路のなかにいると、自分がどこにいるのかわかりません」と、オースティンは言う。「迷路を通り抜けるためにどのくらいの時間が必要なのか、中にいるとわかりません。堂々巡りになってしまう可能性もあります」

細菌はコミュニケーションする

実際のところ、このゲームが本当に想定しているプレーヤーはオースティンではない。それどころか、迷路の設計は「有機体はどのように問題を解決するのか」という、より大きな問題の答えを見つけるための一歩にすぎない。この研究室の迷路競技の本物の“選手”たちは、バクテリア(細菌)なのだ。 オースティンやファンたちは、微生物であるバクテリアの協力しあう能力について研究している。ファンは「細菌が本当はどのくらい“賢い”か調べる」目的で迷路を使ったテストというアイデアを思いついたのだと、オースティンは説明する。 興味深いことに、最も単純な生物のひとつである単細胞生物のバクテリアが集まると、個別のパーツを足し合わせるだけではなく、問題解決能力のあるユニットをつくって協力して働くことで知られている。 例えば、人間の体内の免疫システムから自分たちを守るために、口のなかにいる細菌は組織化してフィルム状のものをつくる。これが歯垢だ。土壌に住む粘液細菌の一種であるミクソコッカス属は、糸に似た細菌のネットワークをつくり、群れになって“狩り”をする。 そして大腸菌を含む多くの細菌は、近くにいる細菌が自分の仲間なのか敵なのかを探るために、互いにコミュニケーションをとることができる。同種の菌の密度を感知するクオラムセンシングと呼ばれる、ある種の化学物質を交換するプロセスを利用するのだ。

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