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「時が癒してくれるよ」も…言わないでほしい慰めの言葉10個

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景気低迷、コロナ禍、少子高齢化・多死社会の到来…。悩み多き現代、心を健やかに保つには、周囲の人たちとの絆だけでなく「お互いを支える技術」が大切です。ここでは、医師として終末期医療、緩和ケアの第一線で活躍し、患者やその家族と深い信頼関係を築いてきた筆者が、相手に寄り添い信頼関係を深める対話術、「傾聴」を軸としたコミュニケーションスキルを紹介します。※本記事は、『傾聴力 相手の心をひらき、信頼を深める』(大和書房)から一部抜粋・再編集したものです。

小説『沈まぬ太陽』の主人公・恩地元が悟ったこと

筆者の職業柄、「大切な人と死別された方に、どのように声をかけたら良いのかわかりません」「なかなかいい言葉が思い浮かばない、どうしたら良いのでしょうか?」といった質問を、しばしば受けることがあります。 今回は、こちらについて考えてみましょう。 山崎豊子さんの『沈まぬ太陽』(新潮社)に、520人の犠牲者を出した航空機事故で息子夫婦とお孫さんを亡くし、天涯孤独の身となった60代の男性が登場します。彼は「同行二人※」を口にしてお遍路に出ます。 ※どうぎょうににん:四国巡礼の遍路等が被る笠に書きつける語で、弘法大師と常にともにあるという意味。 その背中を見送った航空会社遺族係の主人公・恩地元は「補償金を以てしても、訴訟を以てしても、償えるものではなく、自らが死者の霊に近づき、弔い慰めるほかない遺族がいることを悟」ります。 そして同作の映画の終幕で、恩地は彼に手紙を送るのです。「私は今も絶望の淵に立つあなたに語れるどんな言葉もありません。私が今まで経験したすべての理不尽でひどい時間を百万倍にしたところであなたの絶望には決して届かない」と。 神仏ならぬ私たち生身の人間には「同行二人」になるのも易しいことではないでしょう。ただ、彼らの「絶望には決して届かない」ことを自覚して接するだけでも、それを意識しないで接するよりも言動に配慮が出るものです。 実はそうやって配慮すると、何も言葉が出てきません。簡単に言葉が出せなくなります。 そう、出なくても良いのです。むしろ安易な慰めの言葉を、沈黙の葛藤に負けて紡いでしまうと、「ああ、この人にはわかってもらえないのだ…」という絶望感や溝を深めてしまうだけかもしれません。

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