なぜ東京五輪・パラリンピックは開催されF1日本GPは中止になったのか…裏事情と2年連続中止が及ぼす影響とは?
その理由は関係各省庁からの正式な回答がないのでわからないが、オリンピックはIOC(国際オリンピック委員会)が開催する4年に1度のスポーツイベントで、東京都は主催者ではなく、IOCと開催都市契約を結び会場を貸す立場だった。したがって、東京都に開催可否の決定権はなく、IOC側が中止と言わない限り、なんとしてでも開催しなければならない立場だった。もし、国内事情でオリンピックが開催できない事態となれば、IOCから損害賠償を請求され、その金額は東京都だけで抱え切れずに国の財政出動も考えられたため国としてオリンピック選手には入国に関して特例措置をとる必要があった。 しかし、日本GPはホンダの100%子会社であるモビリティランドが主催する民間のイベントのため、中止となっても国の財政出動はない。オリンピック閉幕後に感染が急拡大しているいま、国はリスクを負う必要はなかった。 これは国だけでなく、鈴鹿サーキットがある三重県も同じだった。実は三重県では今年、第76回国民体育大会(国体)が9月から開催される予定だったが、新型コロナウイルスの感染急拡大に伴い、三重県は8月21日に、日本スポーツ協会と文部科学省に対し、国体の中止の申し入れを行った。日本GPの中止発表が先だったが、同じ三重県にある鈴鹿サーキットを運営するモビリティランド側が、日本GP開催断念に舵を切った問題と無縁ではなかったのかもしれない。 そして、これは日本だけの問題ではなく、今後、海外でも中止となるグランプリが出てきても不思議はない。すでに秋に予定していたオーストラリアは日本GP同様、2年連続中止を決定しており、アメリカ、メキシコ、ブラジルもデルタ株の感染拡大によって先行きは不透明だ。 その一方で、日本よりも感染状況が悪化しているヨーロッパの一部の国では、昨年もそして今年もF1が開催され続けているという現実もある。 日本GP中止を受けて、F1側は早急に後半戦のスケジュール変更を行わなければならなくなった。今季のレース数を23戦から22戦に削減することも決定した。F1が世界選手権という名称を冠するならば、現在のように単に開催できる国だけを巡り続けるのではなく、世界の感染状況を注視して、そろそろF1のあるべき姿を長期的なビジョンにたって見直すべきではないか。そうでなければ、日本をはじめ中止となったグランプリ開催に熱意を注いだ関係者や楽しみにしていたファンが浮かばれない。 (文責・尾張正博/モータージャーナリスト)