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高樹のぶ子さんに決まる 泉鏡花文学賞

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北國新聞社

 金沢市が制定する第48回泉鏡花文学賞は14日、高樹のぶ子さん(74)の「小説伊勢物語業平」に決まった。受賞作は平安時代の歌物語「伊勢物語」の主人公とされる在原業平(ありわらのなりひら)の生涯を、和歌を織り込みながら独特の文体で、初めて小説化した意欲作。高樹さんは「『新しい自分の冒険』をした作品に評価をもらった。日本の美をきちんと書いている鏡花の名の賞を頂き、大変うれしい」と喜びを語った。

 選考委員会は東京の赤坂浅田で開かれ、五木寛之、村松友●、金井美恵子、嵐山光三郎、山田詠美、綿矢りさの計6氏が委員を務めた。

 選考後、取材に応じた綿矢氏は「美しく、語るような文体で、和歌を生かした形で小説を書かれていた。相当の実力がないと書けない作品だと、評価が高かった」と振り返った。

 村松氏は「歌、伊勢物語という既存の物語、作者が作るフィクションの三つを溶け合わせている文体を、ものすごい力を込めて作り出した。作家として円熟したこの時期でこそ書ける力作だ」と評価した。

 東京で受賞の連絡を受けた高樹さんは、朗報をすぐに「1100年前の業平」へ報告したという。

 独特の文体は、口承文学であった日本文学の音律、リズムを大切にしたためた。「歌の音律を壊さずに、歌の中身を地の文に溶け込ませるように小説的に書くことが一番難しかった。読んで音楽を感じてもらいたい」と語った。

 業平をテーマに選んだ理由について「日本の美意識は、権力者でなく、傍流の文学によって受け継がれてきた。その源流は業平にあると思う。日本の美意識のルーツを取り上げたかった」と明かした。

 金沢との縁は深く「非常に文学的土壌がある土地。島清(しませ)恋愛文学賞でのご縁もあり、また金沢の鏡花賞を頂けて大変うれしい」と喜び、受賞作が「古典との懸け橋になればいい」と期待した。

 泉鏡花文学賞は1973(昭和48)年、金沢市が全国で初めて自治体主催の文学賞として制定。今回は昨年8月1日から今年7月31日に刊行された文芸作品から「ロマンの香り高い作品」を基準に選考した。