新型コロナウイルスに覆われた2020年をGoogleさんと振り返る
今年もあと少しなので、この連載「Googleさん」で、Googleの1年を振り返ってみます。何しろ手広くやっている会社なので、網羅はできませんが、気になったことをいくつか。 さよなら、Google Play Music Googleさんとコロナ 今年を振り返るのに無視できないのは新型コロナウイルス感染症(COVID-19)です。 私が最初に書いた新型コロナ関連記事は、1月31日付の「Google、新型コロナウイルス対策でWHOと協力」でした。ダイアモンド・プリンセス号での感染が報じられる前で、まだどこか他人事のような気がしていたように思います。 Googleは、3月には非正規雇用者のための「COVID-19基金」を設立し、情報まとめサイトも公開。 そして4月、あの「曝露通知アプリAPI」をAppleと共同で発表しました。いつもはあまり仲良しでもない両社のCEOが同時にツイートで発表したのが印象的でした。トップダウンではなく、GoogleとAppleのエンジニアがタッグを組んだというのも、かっこいいなぁと思いました。 このAPIを使った曝露通知アプリ「COCOA」が日本で公開されたのは6月19日。私もインストールし、今184日目です。人混みを歩いた後しばらくは、アプリで確認するのが怖いけど、今のところ接触の通知はもらっていません。 Googleのヘルプページによると、現在50の国、地域、州がAPIを採用しているそうです。 Googleはまた、11月に「COVID-19感染予測(日本版)」を公開しました。今のところ、ありがたくない右肩上がりな予測です。これを見て多くの人が行動を律することで、予測が外れてしまうといいのですが。 Google自身もコロナの影響を大きく受けており、3月初旬から従業員に在宅勤務を奨励し、7月の時点で2021年6月末まで在宅でということにし、最近の報道によると、オフィスへの復帰を9月まで延期し、その後も新しい日常として、週に3日オフィスに出て、残りはリモートワークというハイブリッドモデルを実験していくことになったようです。 コロナでリモートワークが普及したおかげで、ビジネスツールは好調でした。「G Suite」あらため「Google Workspace」を擁するクラウド部門の第3四半期の売上高は45%増。ところでGoogleの名称変更には結構泣かされます。WorkspaceもFacebookの「Workplace」とごっちゃになりそうで、G Suiteの方が良かった。 Googleさんのダウン コロナでリモートワークが増えた影響もあるのではないかと思うのですが、今年はGoogleのサービスが3月、8月、9月、12月に結構派手にダウンしました。いずれも数十分で解決していて、さすがという声もありました。 今年はGoogleだけでなく、Microsoft、Amazon.comのAWS、Apple、Twitter、Slackなどでの障害発生が印象に残りました。 音楽と写真 「Google Play Music」が「YouTube Music」に完全移行したのも今年のことでした。この連載でも何度か紹介しましたが、2018年11月にYouTube Musicを開始してから、時間をかけての移行でした。アップロードしたコンテンツ、みなさんは完全に移行できたでしょうか? 11月に発表されたGoogleフォトの無制限アップロード終了も、Google Play Music終了と同じくらいの衝撃でした(個人の感想です)。こちらも、衝撃の大きさを想定してなのでしょう、来年6月まで猶予期間があります。その間に無駄な写真を整理したりすれば、しばらくは無料のまま使える人が多いのでは? この変更で、他のクラウドサービスへの乗り換えを検討する人も多いと思いますが、私は有料サービスでGoogleさんに面倒見てもらうことを選びました。障害発生時の迅速な対応を見て、比較的安心だと思ったこともあり。 GoogleさんのAI Googleのサービスを選ぶ理由は、安心感だけではありません。AIツールの便利さもあります。YouTube MusicのAIは、今の所私の好みをあまり反映してくれていない感じですが、Googleフォトの検索やGoogleマップとの連携が捨てがたいので。 「Pixel 5」での写真撮影も、AIのおかげで何も考えずに撮ってもそれなりにきれいです。 でもAIはまだ問題も孕んだ新しい技術。そして、その危険性について警鐘を鳴らした幹部を解雇したことが、今問題になっています。後戻りは難しいので、利益を急がずに慎重に進んでほしいところです。 Don't be Evil AIの著名研究者、ティムニット・ゲブルさんの解雇は、彼女が黒人女性ということから、Googleの職場におけるダイバーシティと公平性の問題としても議論を呼んでいます。彼女を支援するGoogler(Googleの従業員)2000人以上が署名した書簡をスンダー・ピチャイCEOに送っています。 2018年11月に大規模に行われた労働運動Google Walkoutの後、運動のリーダー的な従業員が次々と退社したことは、Googleが従業員の声を聴くより、圧力を掛けたのかなと思わせました。ゲブルさんの解雇は、問題があまり改善されていないことを印象付けました。 ゲブルさんが解雇されたとツイートした同じ日、米政府の独立行政機関NLRBが、Googleが2019年に従業員を解雇したのは労働法違反だとして告発状を出しました。Googleは違反じゃないと主張しています。 ゲブルさんのTwitterアカウントを見ると、人事部の横暴さや幹部のパワハラ的な行為など、GoogleのEvilさを暴くような中の人のツイートのRTが並んでいます。読んでいると「Don't be Evil」はどこに?と悲しくなります。 バイデン大統領はGoogleを分割するの? Googleが抱えるもう1つの大きな問題は、力を持ちすぎたと批判されていることです。 サービスダウンでも、Googleフォト(を含むドライブ)の件でも、いかに自分がGoogleに依存しているのかに気付かされます。欧米では、Googleを含むIT大手があまりにも力を持ちすぎたとして、分割すべきだという主張があります。来年1月20日に米大統領に就任する予定のバイデンさんの民主党も以前からそういう意見です。欧州連合は今月15日、企業分割を視野に入れた新しい法案を発表しました。 確かに営利企業にあまりにも大きな権力を持たせるのは怖いことではありますが、大きいからこそできることもたくさんあるので、ここはひとつ分割ではなく、悪いことができないような法律の整備という方向を目指していただきたいところ。 米国でもGoogleは独禁法関連で立て続けに3つの訴訟を起こされました。いずれも裁判はこれから数年続くとみられます。 来年楽しみなこと、心配なこと 欧州連合といえば、Googleによる米Fitbitの買収をようやく承認してくれました。まだ他の当局が残っていますが買収完了への大きな一歩です。来年は無理かもしれませんが、「Pixel Watch」(仮)の可能性が少し高まりました。 来年後半には、「Pixel Glass」(仮、ARメガネのこと)が登場したりしたら楽しい。「Google Glass」の一般提供をやめ、VRのDaydreamも終了したGoogleですが、6月にスマートグラス企業を買収していて、まだやる気がありそうです。 Chromebookはコロナ禍で需要が伸びている(主に海外の教育機関で、ですが)ので、以前のようになくなっちゃうかも、と心配する必要はなさそうです。 心配なのはPixelスマートフォン。Pixel 5はPixel 4のようなハイエンドではなくても、バランスのいい端末なので、来年にはぜひ「Pixel 6」を出してほしいのですが、来年もコロナ禍が続くとなると、どうなることやら。と、いうことで、皆さんよいお年を。 ※この記事は、Googleさんの動向をゆるく追いかける連載コラム「Googleさん」最新回です。
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