マンション価格はドルベースで値下がり中? 首都圏のマンション市場動向を不動産アナリストが解説!【2022年5月版】
最新の市場動向を見ながら、マンション市場の動向を紹介したい。ウクライナ情勢で不透明感がある中、販売開始時期が延びた新築マンションも見られた。一方、契約率は75.2%と高水準を維持しており、マンション市場は変わらず堅調だ。(不動産アナリスト:岡本郁雄) 新築マンションの契約数は絶好調!
急激な円安がもたらす不動産市場への影響
ロシアのウクライナ侵略以降、円相場の下落が止まらない。本稿を書いている2022年4月28日には、2002年以来となる20年ぶりの円安ドル高の1ドル=130円を突破した。 要因は、物価高に対応した欧米各国の政策金利の引き上げ。アメリカなどが経済の回復基調でインフレ傾向にあった中で、ロシアのウクライナ侵攻でエネルギー価格をはじめとするさまざまな原料・食料品価格が上昇。アメリカなどは、インフレ抑制のために政策金利を引き上げている。 一方で、日本は大規模な金融緩和政策を堅持。長期金利を抑えるために、日本銀行による指値オペが行われており、日本と欧米各国との金利差が拡大している。日本銀行は、今の金融緩和策を当面続けるとしており、今後さらに円安が進む可能性がある。 不動産市場にも影響が出始めている。もともと建築費の高止まりが続いていた中、コロナ禍による世界的な住宅需要の高まりによって、木材などの資材価格が上昇した。さらにエネルギー価格の上昇やウクライナ情勢による資源価格の高騰に円安が加わることで、建築費は今後さらに高くなるることが予想される。建設物価調査会総合研究所発表の2022年3月分の建設総合(東京)の建設資材物価指数は、126.7で前年同月比14.9%も上昇している。 新築マンションは、ドルベースでは値下がり! また、円安はドルベースで見た日本の不動産価格を引き下げることにもつながる。2011年4月末日の1ドルの為替相場(東京インターバンク相場 月末)は、81.60円だった。2011年の首都圏新築マンションの年平均価格は4,578万円。ドルベースに換算すると約56万1000ドルになる。 仮に2022年4月の為替相場を1ドル=130円とし、2021年度の首都圏新築マンション平均価格6,360万円で試算すると、約48万9000ドル。大きく上昇しているはずのマンション価格は、ドルベースで見ると下がっている。1ドル108円89銭だった1年前の2021年4月末(2021年の首都圏新築マンションの平均価格は6,260万円)は、試算すると約57万4000ドル。1年で10万ドル近くも安くなったことになる。 今は、コロナ禍の移動制限があり、外国人が円安メリットを実感しにくいが、往来が活発になれば日本の不動産を割安と感じても不思議はない。 円安で注意すべきもう一つのポイントは、住宅ローン金利の動向だ。日米の金融政策の違いが円安の大きな要因とすれば、将来的には金融政策が変わる可能性もある。住宅ローン金利は、日本銀行の金融緩和によって変わらず低水準だが、長期金利の上昇もあり、2022年5月の住宅ローン金利を引き上げる金融機関が目立つ。 長期金利が大きく上昇しているアメリカでは、住宅ローン金利が大幅にアップしている。当面は今の政策が維持されると思われるが、金利の先高観は高まっており、注意が必要だろう。 続いて、2022年3月度の首都圏新築マンション市場を見てみよう。