「インフルエンサー」と「ミラー配信」が変えたスポーツ観戦のあり方。ZETA世界3位を目にした41万人はどこからやって来たのか
今年4月にアイスランド・レイキャビクにて行われた、Riot Gamesのファーストパーソン・シューティングゲーム (FPS)『VALORANT』の世界大会、「Champions Tour 2022: Stage 1 Masters」にて日本人5人のチーム「ZETA DIVISION」が3位を勝ち取ったことが大きな話題となった。 Twitterでは「#ZETAWIN」がトレンド1位になり、そのまま民放各局でも「日本のesportsチームが大きな結果を出した」ことが報道された。間違いなく、日本のesportsにおいて極めて大きな前進だったといえる。 どのようにZETAはこの功績をもぎとったのか。それはひとえに、選手たちの血の滲むような努力、アナリストたちの的確な分析、そしてチームのデザイナーたちの演出など、ZETAの情熱と努力が実った結果であるのは間違いない。 しかし、彼らがいかに偉業を成し遂げたとしても、それを実際に見届け、評価し、拡散をする存在がいなければ、その偉業は「所詮、ゲームでの結果」などと言われ広く理解されなかったかもしれない。少なくとも、日本の旧態依然としたマスメディアを中心とする社会にあっては、どんな偉業にも「いいね」や「再生数」などの数字で評価する「証人」が必要である。だがこの「#ZETAWIN」には、その偉業に相応しいだけの、圧倒的な証人の数がいた。 その数、なんと「41万人」。試合中、国内の全ての配信チャンネルでの最大の同時接続者数の合計は「41万人」だった。これは当然、日本のesports史において過去最多のものである。41万人が見守り、熱狂したこの瞬間。そこに「3位」という実績が掛けあわさったことで、「41万人」×「3位」の大熱狂が起こった。それがSNSのトレンドとなり、テレビを通じて日本全国へ駆け巡ったのである。 ではどのようにして41万人もの証人を集めることができたのだろうか。それはゲームや選手の人気だけによるものではない。従来の興行では考えられない「放映権」の拡大実現と、esportsシーンにおいて当事者としての顔も併せ持つ「配信者」たちだからこそ成し得た。言い換えれば、ソーシャルネットワーク全盛の現代ならではの異例の発達によって実現したものだ。 今回はあえて、「3位」ではなく「41万人」に注目してこの「熱狂」を論じたい。
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