韓国野党、再び弾劾案提出へ 14日採決 出国禁止で捜査も並行
韓国の尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領による戒厳令の宣布を巡り、法務省は9日、尹氏を出国禁止処分とした。韓国メディアによると現職大統領が出国禁止となるのは初めて。検察などで作る特別捜査本部が内乱容疑などで捜査している。韓国大統領は憲法で不逮捕特権があるが、内乱罪は例外。 政府高官の不正を捜査する「高官犯罪捜査庁」が尹氏を出国禁止にするよう要請していた。韓国メディアによると、同庁の高官は尹氏の妻の金建希(キム・ゴンヒ)氏も出国禁止にするかどうかを問われ「検討中だ」と述べた。 一方、最大野党「共に民主党」は8日、11日に開会する予定の臨時国会で7日夜に投票不成立で廃案となった尹氏に対する弾劾訴追案を再び提出し、14日に採決すると発表した。尹氏に対する捜査と弾劾訴追が並行して進む異例の事態となっている。 また検察は8日、尹氏に戒厳令を建議したとされ、戒厳軍を指揮した金龍顕(キム・ヨンヒョン)前国防相を内乱などの容疑で拘束した。朴世鉉(パク・セヒョン)特捜本部長は8日の記者会見で「職権を乱用し、憲法秩序を乱す目的で暴動を起こした」疑いだと説明した。 尹氏拘束の可能性を問われると「捜査計画については答えない。(容疑者の)地位の上下を問わず厳正に最後まで捜査する」と述べるにとどめた。聯合ニュースによると、捜査機関が現職大統領の身柄を拘束した前例はないという。 野党などが5日までに、尹氏や金前国防相らを内乱罪や職権乱用罪で告発していた。内乱罪の最高刑は死刑となっている。 尹氏は7日の談話で「法的、政治的な責任問題は回避しない」と述べていた。 検察は8日、金前国防相の携帯電話を押収。また執務室などを家宅捜索した。金氏は戒厳令の失敗後、秘匿性の高い通信アプリのアカウントを消去し、再登録しており、証拠隠滅を図ったとみられる。韓国メディアによると、事件の主要な関係者たちの説明に食い違いがあるという。検察は8日、戒厳司令官を務めた朴安洙(パク・アンス)陸軍参謀総長ら軍幹部から参考人として事情を聴いた。 野党は、尹氏や与党「国民の力」の韓東勲(ハン・ドンフン)代表が元検察官であることから公平性を担保できないとして、政府から独立した「特別検察官」を任命するための法案を提案する方針を示している。特別検察官は、大統領の親族らが関与した不正など、政治的中立性を求められる事件を担当し、国会が推薦した弁護士から任命する。【ソウル日下部元美、福岡静哉】