オバマ大統領が目指す移民改革 行政命令で“強行”した背景 成蹊大教授・西山隆行
今後のアメリカ政治への影響は
では、オバマ大統領の行政命令は今後の政局にどのような影響をもたらすでしょうか。オバマ大統領の決定は包括的移民改革反対派の立場をより強硬なものとし、保守派を団結させたといえます。その結果、共和党が多数を占める議会で、オバマ大統領の残任期間中に包括的移民法改革を実現するのはより困難になったと考えられます。 2016年の大統領選挙に及ぼす影響については、予測が困難です。一連の共和党の強硬派の対応を見ると、中南米系が共和党候補に積極的に投票する可能性は低いといえます。ただし、中南米系の中にはオバマ大統領の対応は不十分だという声もあり、中南米系が民主党に積極的に投票するという保証はありません。今年の中間選挙では、中南米系の63%、アジア系の66%が民主党に投票しましたが、中南米系とアジア系を合わせても有権者の11%にしかなりません。一方、白人は依然有権者の75%を占めており、不法移民に対して反感を抱いている保守的な白人が挙って共和党に投票する可能性もあります。移民問題は長期的には民主党に有効な争点かもしれませんが、短期的には不利に働く可能性もあるのです。 人口が増大しつつあるマイノリティが、近年、アメリカ政治の在り方を変えつつあります。今後もアメリカの移民やマイノリティをめぐる政治過程に注目する必要があるでしょう。