【NFL】“レジェンド”ロスリスバーガーと若き日のマホームズが出会ったのは5年前だった
AFCワイルドカードプレーオフ カンザスシティ・チーフス〇42-21●ピッツバーグ・スティーラーズ (1月16日 カンザスシティ アローヘッド スタジアム)
試合最後のプレー、というよりはQBベン・ロスリスバーガー現役最後のプレーは、TEザック・ジェントリーへのショートパスだった。ジェントリーがゴール前でタックルされて、試合が終了。ロスリスバーガーにサイドラインから最初に駆け寄ったのは、チーフスのQBパトリック・マホームズだった。 "I'm gonna get one of these at some point." "I need one too!" マホームズは、ロスリスバーガーのジャージを指さして、「あとでいいから、これを欲しいと思っています」 と語りかけ、ロスリスバーガーも「俺も君のジャージーを欲しい」と応じた。 会話はそれだけで、ほんの数秒の短いものだったが、老レジェンドに対する若き英雄のリスペクトがあふれていた。
「自分も同じようにタフネスを持ってプレーしたい」
2人が出会ったのは、今から5年前のことだ。2017年4月上旬、テキサス工科大のエースQBとして、ドラフトの有力候補だったマホームズは、いくつかのチーム施設を訪問していた。4月3日、ピッツバーグを訪問し、スティーラーズのチーム施設でいろいろと説明を受けた。 その時のことを、マホームズはNFL.comにこう話している。 "I was watching film there, for about two hours, and he walked in just to say 'Hi'," "There wasn't much to it, but that was the most exciting thing of the trip for me. I look at him, and I try to play with that same toughness. He's going to be a Hall of Famer, he's been to Super Bowls, that's the guy you want to be like. Hopefully I'll get to learn from him one day. Maybe I'll end up competing against him." 「そこ(スティーラーズの球団施設)で2時間ほどフィルムを見ていたら、彼(ロスリスバーガー)が『ハーイ』と言って入ってきたんだ」 「大したことではなかったかもしれない。でも私にとっては、この旅で最もエキサイティングなことだった。」 「彼を見ていると、自分も同じようにタフネスを持ってプレーしようと思う。彼は殿堂入りするだろうし、スーパーボウルにも出場している。私はそういう人になりたいと思っている。望みがかなうなら、私もいつか彼から教えを受けたいと思っている。」 「もしかしたら、将来、彼と対戦することになるかもしれない。」 マホームズは、この時話したことを、ほぼすべて的中させた。 この時のマホームズは、決してエリートとは言えなかった。テキサス工科大では2016年にパス5052ヤードを記録し、カレッジフットボールの最上位FBSで全米1位となっていたが、同大は以前からスタッツが跳ね上がるパス多投オフェンスで有名だった。同大出身のQBは「システムQB」と揶揄され、クリフ・キングスベリー(現カーディナルスヘッドコーチ)をはじめ、ドラフト1巡で指名されたQBはいなかった。 ただ、マホームズ自身は、日本のプロ野球でも投手として活躍した父パットさん譲りの強肩、頑健な体格と優れた運動能力、さらにパスラッシュへの対処能力を評価されて、評価が上がっている時期だった。 ロスリスバーガーも、今でこそ体重オーバーで動きが鈍くなってしまったが、若い頃は機動力があり、パスラッシュを次々にかわしながらパスを決めるスタイルで、「大きく強くなったエルウエイ」「モバイル能力を持ったブレッドソー」と表現できるQBだった。 ポケットパサーではなく、動きながらパスを投げる能力で勝負することを目指していたマホームズにとって、ロスリスバーガーは、NFLを意識した時に、自分がなるべきモデルだった。