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「やべっちFC」終了報道の舞台裏と、存続の“ウルトラC”

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新型コロナウイルスの感染拡大からサッカーJリーグが再開する直前、サッカー界にとってショッキングなニュースが流れていた。放送 18 年目を迎えていたテレビ朝日系「やべっち F.C.~日本サッカー応援宣言~」が8月いっぱいでピリオドを打つ、というのだ。 岡村隆史が暴露…上沼恵美子がキンコン梶原をクビにした“裏事情” 日本サッカーを支えてきたサッカー番組にいったい何が起きたのか、その舞台裏を探った。 「おじいちゃんになるまで盛り上げたいと思います……ハート」 打ち切り報道後、最初のオンエアとなった5日、MCの矢部浩之は番組の締めくくりに笑顔でコメントした。現在までのところ、テレビ朝日側からの「番組終了」の正式発表はない。しかし、舞台裏を取材し、事実が次々に明らかになるにつれて、矢部のコメントはむなしく響く。 Jリーグが再開したこのタイミングで「やべっち F.C.」の放送終了が表面化すること自体、「一体なぜ?」という疑問が湧く。しかしこの話は突然決まったものではなかったようだ。 TV 局スタッフはこう証言する。 「一番の理由は、矢部さんの番組に対するモチベーションが薄くなってきたことです。家族との時間を重視するようになった昨今、深夜の生放送番組は敬遠しがちになりました。『やべっち FC』 の MCとして ワールドカップ本大会も何度も取材パスで現地に行ってますし、本人的にはもう満足なんじゃないですかね」 ある⺠放関係者はこう付け加える。 「番組の予算は、放送時間などを考えると1回 300 万円台と思います。このランクの制作費ならば、スポンサーさんが番組を続けたいという意向が大前提ですが、我々の段階で何ともでなる金額です。しかし当のMCさんに熱意がないとなると、話は違ってきます」 小学4年からサッカーを始めた矢部は「(C大阪の前身)ヤンマーサッカー部の選手になる」という夢を本気で追い求めていた。大阪・茨木⻄高サッカー部でも1年からレギュラー、大阪地区選抜のセレクションメンバーにも名を連ねたサッカー少年の矢部にとって、テレビ朝日から来た「サッカー番組の MC を務めてほしい」というオファーは願ってもないものだったはずだ。 番組は 日韓W杯が開催された2002 年4月に始まった。以降、薄氷の戦いが毎回続く W 杯アジア最終予選にも必ず現場に足を運び、春の J クラブキャンプの時に選手スタッフが自らカメラを回して取材をする「デジっち」など、ユニークな企画を連発。特に「デジっち」は 2013 年に J リーグ公認企画にもなった。Jリーグ関係者が明かす。 「深夜生放送の番組でしたが、J1全試合のビデオを流してくれました。サッカーをする子供たちが、毎週しっかりこの番組を録画をして楽しんでいると聞いていました。日本サッカー界に大きく貢献していただいたのは言うまでもありません」 テレビ朝日どころか、日本サッカー界を背負って立つ看板番組にもなった。この番組をきっかけに矢部本人の知名度もアップ。2013 年には元 TBS ⻘木裕子アナウンサーと結婚など、絵に描いたような幸せを手に入れた矢部だが、それがゆえに、本人は人生の大きな分岐点を迎えたわけだ。スポーツ紙デスクが明かす。 「独身時代はお笑いタレントを集めた『矢部会』を編成して、メンバーには南海キャンディーズの山里亮太や渡部建らがいたんですが、結婚後は夜遊びの噂はピタリと止まりました。2人の子供にも恵まれ、結婚翌年の2014 年に誕生した⻑男・稜(りょう)くんは生後7か月で『やべっち F.C.』にも出演させるほど、子煩悩なパパなんです。家族と過ごす時間を大切にしたい矢部さんにとって、この番組を続けることが重荷になっていたのかもしれません」 今後同番組が形を変えて続く場合にゲスト出演する可能性は残されているが、矢部の「熱量」は今後、2人の子供の“お受験”にも向けられるのかもしれない。 一方、テレビ朝日の業績も番組の終了に関係しているのではないかとみられている。 コロナ禍、テレビ業界も広告収入の不振で先行き不透明な状況になっているのは周知の事実。生き残りのためには、広告収入に次ぐ収入の柱が不可欠。⺠放の雄・日本テレビには巨人軍があり、フジテレビは「稼ぐ子会社」を育てることに尽力している。また、TBS は本社一体の港区・赤坂地区の不動産事業が支えている。 テレビ朝日にも、サイバーエージェントと 2016 年4月に動画配信事業を行うことで共同開局した AbemaTV がある。しかし、こちらの事業はいまだ赤字が続く。また、テレビ朝日ホールディングスが発表した2020年3月期の決算資料を見ても、売上高・営業利益ともに前期比でマイナスとなっている。 テレビ朝日ホールディングの株式を約1%所有する米・ファンド RMB キャピタルからは「新たなコンテンツを創出しなければ(テレ朝の)株価低迷は続く」と異例の注文をつけられたほどだ。こうした中では、各番組の見直しが進められていてもおかしくない。 前出のスポーツ紙デスクが明かす。 「テレビ朝日の内部では、更新時期を迎えたアジアサッカー連盟(AFC)と の放映権契約も 、20 年以降も継続したいという話が進んでいました。W杯アジア最終予選の放映権を獲得し、その流れで『やべっち F.C.』も続行するという⻘写真も確かにありました。 しかしここで逆風が吹いた。AFC が、 DDMC Fortis 社(スイスと中国の合弁会社)と、21年から28年までの8年間(21 年から28 年)で、なんと20億ドル(日本円約 2151 億円)というとんでもない巨額放映権契約を結んだのです。 これは日本のテレビ局ではとても太刀打ちできる金額ではない。新型コロナウイルスの影響で アジア最終予選もいつ再開されるかわからない状況で、放映権の獲得への意欲が失われていてもおかしくはない」 日本サッカー協会関係者は、森保ジャパンが挑戦する W 杯アジア最終予選を日放映する日本の TV 局について「まだ決まっていない」と明言している。 ではこのまま「やべっち F.C.」は8月いっぱいで打ち切り、完全消滅していくのか。ある民放関係者は「ウルトラ C」が一つある、と耳打ちした。 「それはやべっちF.C.を AbemaTV に移すこと。サッカーで言う『完全移籍』させることですよ」 たしかに AbemaTV は赤字が続いているが、2020 年度第1四半期(19 年 10 月から12 月)の決算では有料会員が 59.3万人になったと明かしている。20~30 代の若年層を中心に今後も会員数が伸びていく可能性がある。 また、速報を意識した同局の番組作りは、サッカー番組にもうってつけなのだ。 多くの J リーガーからも「『やべっちFC』をやめないでほしい」という発信が続いた。前出の民放関係者はこう続ける。 「サッカーを愛するテレビマンからすれば、番組をなんとしてでも継続したいと思うでしょう。AbemaTV への完全移籍は、誰でも考えること。それをやるかどうかは局内のモチベーションの問題でしょうね」 J リーグも DAZN との配信契約により、地上波で見られる環境は激減している。“サッカー番組の雄”だった『やべっち F.C.』もこのまま沈没していくのか。それは、テレビ朝日のサッカー愛にかかっている、とも言えるだろう。

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