SNSの撤退から3年…LUSHが「後悔していない」理由
11月28日、オーストラリア議会が16歳未満のSNS利用を禁止する法案を、世界で初めて可決するなどSNSの悪影響に注目が集まっている。 【全画像をみる】SNSの撤退から3年…LUSHが「後悔していない」理由 一方で企業にとっては、SNSによる発信が販売促進に欠かせない存在になり、11月29日のブラックフライデーに合わせてメーカーや小売各社が宣伝競争を繰り広げている。 そんななか、イギリス発の化粧品メーカー「LUSH(ラッシュ)」は、SNSを運営するビッグテックが「個人情報を略奪し、心まで侵略する中毒性の高いアルゴリズムがヘイトスピーチや偽情報を拡散させている」と主張し、3年前の2021年のブラックフライデーに合わせてInstagram、TikTok、Facebookやなど一部のSNSの利用を世界で一斉停止したことで知られている。 2024年のブラックフライデーでも一部のSNSでの発信は行わないが、アジア最大の旗艦店・ラッシュ新宿店では、商品作りの実演や「体験」が楽しめるイベントを開催している。
2023年にも問題提起キャンペーン
ラッシュ共同創立者のマーク・コンスタンティン氏は2021年、ブラックフライデーに合わせたSNSからの撤退について、以下のようなコメントを発表した。 「SNS利用時に私たちが危険にさらされているという証拠が、今や数多くあります。私は自分のお客様をこのような環境にさらしたくありません。今こそ行動を起こすべき時が来たのです」 また2023年のブラックフライデーでラッシュは、ビックテックの情報利用に対して問題提起するキャンペーンを展開、売り上げの全額をキャンペーンパートナーに寄付する限定のバスボムを発売した。
「ソーシャル疲れは深刻になっている」
SNS発信ができないことに、ブランドとしてのマイナス点はないのか? ラッシュ・ブランドシニアマネジャーの宮腰陽子氏は「告知などのツールとしてSNSを使うのはスタンダードになっている。ブランドとして利用できないという意味では、デメリットといえるかもしれない」としつつも、「メンタルヘルスが脅かされている現実がある以上、SNSからサインアウトして企業として抗議したことの意味は大きい」とその意義を強調する。 一方でラッシュでは、インフルエンサーをキャンペーンに招いており、インフルエンサーによるSNSの拡散には期待している面もある。 「ユーザーに対してSNSの禁止を求めているのではありません。私達が問題にしているのは、SNSの運営企業がメンタルヘルスを損なうと知りつつも、中毒性のあるアルゴリズムを利用していることです」(宮腰氏) SNSなどデジタルによるコミュニケーションが増えている現在こそ、「店舗に来て五感で楽しんでほしい」と宮腰氏は話す。 「特に若い世代の『ソーシャル疲れ』は深刻化していると感じる。ラッシュは香りを大事にするブランドでもある。店舗に来てもらって香りや華やかな色、スタッフとの会話などデジタルでは伝わらない魅力を楽しんでほしい」
横山耕太郎