『Vカツ』終了に『Second Life』創始者の新たな動き……アバター文化の隆盛と懸念が垣間見えた一週間
アバター制限が取り払われた『cluster』が、ますます盛り上がりを見せている。まず「Vtuver蟹」やVRChat団体「悪役結社ヴァリアール」など、様々な活動者が「cluster」へ相次いでワールドを展開する動きが見られた。他のサービスをメインに活動している人が、新しくなった『cluster』へ遊びに行くという場面も目立つ。筆者も『cluster』に遊びにいったときに、ロビーにて『Second Life』から遊びにきたという人が談笑しているのを見かけた。 【画像】かつて「Vカツ」にて作成した筆者のアバター 先日、2時間ほど『cluster』を散策してみてあらためて感じたのは、そのとっつきやすさだ。PCでも、スマホでも、VRでも遊ぶことができるため、様々な人がアクセスできる。アバターは自前で用意することも、『cluster』内で作成することもできるし、デフォルトアバターも用意されている。UIは日本語なので、操作も比較的迷うことはない。自由にアバターをアップロードできるようになった現在、『cluster』はメタバースの入門として広くオススメできるだろう。 メタバース業界の動きも先週に続き見られた。アバター販売・改変代行プラットフォームとして展開が予定されている「ポリゴンテーラー」に先立ち、1月11日に株式会社ポリゴンテーラーが設立された。同日には、アバター操作ソフトウェア「Luppet」などを手掛ける合同会社ラペットテクノロジーズが、組織再編によって株式会社化した。この2社に関わるのが、「なるがみ」こと喜田一成氏だ。「Skeb」の創業者であり、自身もVRChatヘビーユーザーである同氏は、国内のメタバース事業のキーマンとなりつつある。さらに、『Second Life』の創設者であるフィリップ・ローズデール氏が、開発会社のLinden Labに戦略顧問として再参加するというニュースも話題になった。加熱するメタバースブームの中で、いまや元祖メタバースとも言われる『Second Life』も万全の体制でこのブームに参戦を決めたということだろう。 その一方で、アバター作成ツール『Vカツ』が、6月30日をもってサービスを終了することを発表した。2018年7月に発表された、クオリティの高いアバターを自由に作成できるツールの一つであり、多くのVTuberが活動初期の肉体をつくり、また一般人がアバターを所有する文化の礎を作ったツールだ。お世話になった人からは感謝の声が寄せられているが、「サービス終了後は作成したアバターの使用を禁止する」という告知には賛否両論だ。少なくとも、現時点で『Vカツ』製のアバターを用いている人は、6月30日までに別のアバターへ移行する必要がある。急な「余命宣告」を前に、戸惑いの声が多く上がっている。 「なりたい自分」になれる点が注目されているアバター文化だが、そのアバターが諸事情によって使用不可となり得るという問題は、今後も少なからずつきまとうだろう。不安を抜本的に解決するには、「VRoid Studio」のような、作成したアバターの著作権が作成者に帰属するツールを利用するか、著作権を引き取る契約でクリエイターに制作依頼をするか、自らフルスクラッチするほかない。似たような問題は、過去にはVTuber業界でたびたび起きている。しかし、メタバースブームの到来により、万人が自分のアバターを持ち得る可能性が出てきた2022年は、この問題はより顕在化する可能性があるだろう。 突然の『Vカツ』サービス終了に界隈は揺れ動いたものの、次なる動きもまた早かった。有志によって移行先ツールの紹介はすぐさま実施された。そして、紹介された移行先ツールの一つ「カスタムモデル Homunclusse」はセールを開始した。また、立ち絵や3Dモデルなどの制作を請け負うクリエイターの営業活動も散見された。この数年で、アバター文化は着実に浸透と発展を遂げており、「市場」はすでに芽生え始めている(決済は仮想通貨ではなく日本円だ!)。万人がアバターを衣服のように売買し、自由に「おしゃれ」を楽しめる世界は、着実に近づきつつある。
浅田カズラ