いきなり!トランプ関税、対中国10%、メキシコ・カナダに25%の狙いとは?【播摩卓士の経済コラム】
相手国だけでなくアメリカ経済にも打撃になるとの見方から、26日のニューヨーク株式市場で、GMは9.0%安、フォードは2.6%安、ステランティスは5.7%安と、ビッグ3の株価は急落しました。 ちなみにアメリカが輸入するアボガドの90%、オレンジジュースの35%はメキシコからとされており、本当に25%関税となれば、相手国だけでなく、米国民の生活に直接影響を与えることになります。 ■同列に扱われたカナダには驚きも トランプ氏はこれまでも、メキシコからの輸入が、中国など他の国からの迂回輸入になっているとの問題意識を持っていました。その意味でメキシコへのトランプ関税は、十分、予想されていましたが、今回、カナダがメキシコと同列に扱われたのは、やや驚きでした。 カナダのトルドー首相は、発表当日に急ぎトランプ氏と2時間も電話で会談しました。トランプ氏の頭の中では、アメリカに入ってくる麻薬や不法移民のうち、カナダ経由も大幅に増加しているという理由なのですが、カナダ国民には納得しがたい理屈でもあり、トルドー政権としては、25%関税が実施されれば、報復関税を検討せざるを得なくなるでしょう。 ■対中国10%は60%に向けた「発射台」 メキシコ・カナダに対する高関税がいわば「ふっかけ」なのに対して、中国に対する10%の追加関税は、本気でコトを構える「手始め」「発射台」という位置づけです。もともとトランプ氏は選挙中に「中国製品に60%の追加関税」と言っていましたから、それに比べれば10%は低い水準です。 今回の対中国追加関税は、合成麻薬の原料を中国が製造しているから、という理由です。メキシコのマフィアが中国から原料を調達し合成麻薬を作ってアメリカに流入させているというのです。在米中国大使館は25日、直ちに声明を発表し、こうした指摘には「根拠がなく、事実と異なる」と反発し、「関税戦争に勝者はいない」とけん制しました。 中国が麻薬の件で直ちにアメリカの意に沿うことができるとは考えにくく、10%の追加関税は実現の可能性が高いと思います。中国製品に対しては10%をスタートラインとして、そこから本丸である通商問題を理由に追加関税60%に向け、徐々に追加されていくという展開が予想されます。
■関税戦争が招く世界経済の停滞 すでに幕が切って落とされた「トランプ関税劇場第2幕」、予想されたこととは言え、再び、貿易の停滞や世界経済の混乱を招くことは必至です。今や中国経済は、8年前の第一幕の時とは、比較にならないほどの苦境にあえいでいます。それは中国経済への深刻な下押し圧力になるだけでなく、とりもなおさず、世界経済の成長の足を大きく引っ張ることになるでしょう。 播摩 卓士(BS-TBS「Bizスクエア」メインキャスター)
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