BTS V&JIN、韓国ドラマOSTで輝くソロとしての手腕 『その年、私たちは』『智異山』などを彩る楽曲たち
近年、BTSのメンバーが、韓国ドラマのOST(Original Sound Track)に参加している。配信された曲は、iTunesのトップソングチャートで100カ国近い国で1位を記録しており、国内だけでなく世界から脚光を浴びるのはBTSならではだろう。本稿では、メンバーのVとJINがそれぞれ担当したOSTとドラマの相性や魅力について触れたい。 【画像】素肌に白いジャケットを纏うBTS V 現在、Netflix配信中の韓国ドラマでランキング上位の『その年、私たちは』。そこで流れるのは、Vの「Christmas Tree」だ。有名画家のチェ・ウン(チェ・ウシク)と広告会社に務めるクク・ヨンス(キム・ダミ)が高校時代に撮影したドキュメンタリーが10年後に人気再燃し、元恋人の二人が不本意な再会を果たして繰り広げられるロマンスドラマである。 本作は、細かく演出された映像の美しさと丁寧に描かれるキャラクターや台詞が見どころ。ウンの職業が画家だけに、自宅や作業場のインテリアなど、お洒落なセットが目に入る。そこで、ウンが作業に入る時に決まってかけるレコードが「Christmas Tree」だ。アコースティックギターから始まるメロディに、そっと息を吹きかけるようにVの声が重なり、ウンの世界観を一瞬にして作りあげ、心地良い空間が生まれる。ドラマ後半から、ウンとヨンスの関係性のポイントとなる場面に流れ出す「Christmas Tree」は、幻想的な雰囲気にいつまでも浸っていたくなる効果をもたらす。Vのセンスの高さと繊細で穏やかな歌声は、物語をより一層深いものにしている。 作詞・作曲、プロデュースをVが自ら手がけた「Sweet Night」は、2020年の大ヒットドラマとなった『梨泰院クラス』のOST曲。大手飲食企業“長家”に全てを奪われた主人公のパク・セロイ(パク・ソジュン)が、梨泰院の小さな居酒屋から飲食業界の韓国ナンバーワンに這い上がっていく復讐劇なのはご存知の方も多いだろう。 「Sweet Night」には、居酒屋名“タンバム(甘い夜)”の意味が含まれ、毎晩苦い夜を過ごすセロイに、甘くて優しい夜が訪れるよう願いが込められている。歌詞には辛い過去を乗り越えていく過程が綴られながら、チョ・イソ(キム・ダミ)への揺れ動く気持ちが浮かぶ。低音から始まるVの深みのあるあたたかな歌声は、イソにはまだ言えないセロイの思いを乗せて、二人の距離をほんの少し近づける。甘い夜へと続く道標になるかのように。 楽曲の創作や俳優業までこなすVは、幅広い表現力で私たちを惹きつけ、深い余韻を残す。また、『その年、私たちは』のチェ・ウシク、『梨泰院クラス』のパク・ソジュとは、プライベートでも親交が深いことで知られており、Vの思い入れは特別だろう。 JINの初のソロOST曲となった「Yours」は、昨年韓国で放送されたtvN15周年特別企画ドラマ『智異山(チリサン)』のメインテーマ曲に抜擢。智異山とは、韓国の神聖なる3大名山(智異山・太白山・鶏龍山)のひとつ。国内最古で最大の国立公園に訪れる人たちを危険から守り救い出すレンジャーが、次々と山で起きる事件を解明していくミステリードラマで、『星からきたあなた』(2013年~2014年)のチョン・ジヒョンと『キングダム』(2019年~)のチュ・ジフンなどの豪華キャストが出演することでも話題を呼んだ。 第一声から心を掴まれる透明感のあるJINの歌声と、壮大な自然との融合に涙が出そうになる。さらに、呼吸をするような歌い方は、深い暗闇の中で助けを待つ者たちの切実さと重なる。繰り返される印象的なハミングは「ここにいるよ」と心の叫びみたいに響き渡り、伸びのある高音に胸が締めつけられるのだ。想いを遠くまで、真っ直ぐに届けるJINの歌声には誠実さを感じる。ワンフレーズずつ丁寧に歌いあげているのも、彼の人柄が出ているのではないだろうか。 そして、VとJINが歌うのは『花郎(ファラン)』(2016年~2017年)のOST曲「死んでも君だよ」。上記で紹介してきた曲とは違い、アップテンポでクールな曲調だ。パク・ソジュン、アイドルグループ ZE:Aのパク・ヒョンシク、SHINeeのミンホらの華やかな面々が扮する新羅時代の“イケメン精鋭軍団”は花郎と呼ばれ、王の親衛隊として活躍する彼らの成長や友情、恋愛模様を描く。何より、Vが演技初挑戦した作品でもあり、最少年の人懐こいハンソン役を演じ切ったことが思い出される。「死んでも君だよ」ではVの低音とJINの高音が気持ちよく連なり、気分が高まるエッジボイスの効いた掛け合いは、ブロマンスだけでなく、切ない三角関係のラブロマンスシーンも盛り上げている。 OSTで見せてくれる新たな一面から、メンバーの一人ひとりの実力ありきの人気グループであることを実感する。もうひとつのドラマが生まれるような、世界観を広げてくれる彼らの楽曲との出逢いをこれからも楽しみにしたい。