実は“大事件” スズキ・スペーシアに「ステレオカメラ」搭載
運転席で本を読むドライバー
さて、ここで説明しておかなくてはならないのが自動運転の現在だ。すでにアウディはRS7によって、サーキットでの高速自動を無人で行えるようになっている。 また2013年に、ベンツは他の車両や歩行者のいる一般道で、バックアップドライバーが運転席に座っているとは言え、100キロの距離を自立自動運転して見せた。
そしてボルボは今年の3月についに一般ユーザーが運転するクルマ100台で、イェーテボリ市周辺の一般公道での自動運転テストを開始すると発表した。ひとまずは歩行者や自転車のない状態でテストが開始されるが、徐々にハードルは上がっていくだろう。しかも注目すべきはその発表時に配布された公式写真だ。それは運転席で本を読んでいるドライバーの写真なのだ。これはつまり自動運転ではドライバーに安全監視義務がない状態を想定していることになる。
筆者も大きな衝撃を受けた。これまでの自動運転はあくまでもドライバーが主体であり、運転の一部を自動化してアシストするものだった。しかし、ついに自動運転はドライバーをただの乗員にしようとしているのだ。 この意味するところは大変大きい。賛否両論があるだろうが、少なくとも自動車メーカーのこの流れはもう止まらないだろう。日本も取り残されないように進歩していかなくてはならない。 しかしながら、ボルボのテストには国や自治体や役所などが積極的に協力しており、そのあたりについては日本の体制に不安がないわけではない。杓子定規なルールで縛られて先に進めない可能性を憂慮せざるを得ないのだ。 ただし、一方で自動車メーカーの電子制御技術そのものはむしろ日本の方がレベルが高い部分も多い。特にトヨタの自動運転制御は世界の最先端の一角を占めているのだ。 さて、こうした自動運転技術はまず高級車にもたらされるだろう。そしてそれが徐々に下のクラスに降りてくるのだが、そこで重要になるのが低価格車の基礎装備だ。ぶつからないブレーキのためにカメラ式センサーが普及していれば、自動運転への敷居がぐっと下がる。 そのためのブレークスルーとして、スズキ・スペーシアのカメラ搭載は日本車全体の底上げに効いてくる重大な分岐点なのである。 (池田直渡・モータージャーナル)