大量の警察官、旭日旗、「帰れ」と叫ぶ人たち。騒然とする日曜日の駅前、いま川崎で起きていること
日本で初めて、差別的言動に刑事罰を科す「ヘイト禁止条例」が川崎市にできてから、1年。市内で続いた在日コリアンなど外国籍市民に対する差別的、排外的な言動を食い止めるのが狙いだったが、条例には「実効性が低い」との批判もつきまとう。事実、駅前では街宣が繰り広げられ、ネット上にはヘイトスピーチが広がり続ける。いま、川崎では何が起きているのか。そして、課題はどこにあるのか。上・中・下の連載でお伝えする。(*この記事にはヘイトスピーチが含まれます。閲覧にご注意ください)【BuzzFeed Japan / 籏智 広太】 【写真】18枚の写真が物語る、人種差別との闘争の歴史
11月下旬の三連休中日、神奈川県川崎市のJR川崎駅前は騒然としていた。駅前にはためく旭日旗。爆音で流れる音楽やノイズ音。そして「帰れ」と叫ぶ人たちーー。 大量の警察官が動員され、駅前広場の一部は通り抜けできなくなっていた。不安そうに眺める家族連れもいる。 この日、駅前で開かれていたのは「日本第一主義」を掲げる「日の丸街宣倶楽部」による街頭宣伝だった。 排外主義的な主張やヘイトスピーチを各地で繰り返していた「在日特権を許さない会」から派生した政治団体「日本第一党」(桜井誠党首)神奈川県本部の元幹部が立ち上げた団体だ。 参加していたのは男女およそ20人。年代は幅広いように見える。トランプ大統領支持グッズの「Make America Great Again」の帽子を被った人も複数、いた。
響き渡る「帰れ」コール
「日本人を弾圧するヘイト条例」「日本国民を差別するヘイト条例」… こう書かれたプラカードを掲げる人がいたように、この団体は、川崎市で今年7月に全面施行された「ヘイト禁止条例」に対し、「日本人差別」などと反発。7月から川崎市内で街宣していた。この日で10回目の街宣だ。 街宣を止めようと集まっているのが、「カウンター」の人たちだ。 街宣側の倍以上の人数が集まっており、「市は条例の活用を」「KAWASAKI AGAINST RACISM」などと記したプラカードを掲げる。スピーカーやメガホンを使って大音量の音楽などを流している人たちもいた。 「帰れ」コールやカウンターの人たちの罵声などにかき消され、街宣の内容はほとんど聞こえない。街宣側の周囲に聴衆が集まることもない。 旭日旗をはためかせる集団のまわりを大量の警察官が囲み、それに対し抗議をする人たちーー。 Twitter上には「何事?」「物々しい雰囲気」「怖い」などという書き込みが広がっていた。