コーヒーとお茶市場に異変 水出しタイプが秋冬も拡大 コロナ・在宅時間の増加で鮮明になった3つの価値
春夏向け小売商品として展開されているコーヒーとお茶の水出しタイプが秋冬も継続して採用される動きが広がっている。 その要因は、温暖化に加えて、嗜好性(おいしさ)・簡便性・経済性の3つの価値をバランスよく兼ね備えている点がコロナ禍で浮き彫りになったことにあると考えられる。 簡便性や経済性の極みはパウダータイプやリキッドで、嗜好性の極みが手いれのコーヒーやお茶だとすると、水出しはその両極端の中間に位置づけられる。このバランスのとれた水出しの3つの価値がコロナ禍による在宅時間の増加で鮮明になったと推定する。 レギュラーコーヒーでは、水出しの市場規模は小さいものの、伸長著しいカテゴリーであることから各社とも注力している。 春夏がメインの市場ではあるが、秋冬に向けても勢いづくのはキーコーヒーの「香味まろやか水出し珈琲」で、新たに秋冬限定パッケージを導入したことも奏功して4-10月の販売金額は前年同期比で2ケタ増を記録した。 この好調要因については「配荷店舗が増加したことも影響しているが、やはり巣ごもり需要の増加が主な要因。リキッドから本格的な味わいを求める方が増えたと考えている」(キーコーヒー)。
紅茶では、三井農林の「日東紅茶」が水出し紅茶で過去最高の売上げを叩き出した。 「日東紅茶」の「水出しアイスティー」シリーズはオフシーズンに差し掛かる8月、9月も引き合いがあり一部の店舗では9月以降も引き続き並べられている。 この動きについて三井農林は「暑さも大きいと思うが、在宅での飲用頻度が増えると、その都度こだわって入れるのは難しくなる。水出しは一度の作業で500ml以上つくることができるので何度も飲むのに適している。おいしさに加えて、簡便性と経済性があることに消費者が気付きはじめたのかもしれない」とみている。 「リプトン」の水出しコールドブリューシリーズも好調となった。中でも今年3月に新発売した「リプトン コールドブリュー ルイボス&ホワイトピーチティー」が成長を牽引。 秋冬施策は特段予定していないものの「水出し紅茶市場の拡大に向けて引き続き取り組んでいく」(ユニリーバ・ジャパン・カスタマーマーケティング)考えだ。
日本茶では、伊藤園が水出し・お湯だし兼用で販売している「ワンポット抹茶入り緑茶 ティーバッグ」の9月の売上げが前年同月比2割増となった。 同商品はマイボトルにも好適な設計となっているが、マイボトル需要はコロナ禍による外出自粛で低迷。伊藤園では、水につけっぱなしでも苦くなりにくく、注ぎ足ししてもおいしく飲めるマイボトルに最適なティーバッグ商品「ボトルにポン」シリーズもラインアップ。来シーズンに向けてマイボトル市場にも挑み続けていく考えだ。