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プロ野球では、叫んだっていいのだ。観客のいない東京ドームで「あっ!」。

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 総武線に乗り、水道橋駅で降りて東京ドームへ向かう。  ついに我々のプロ野球が帰ってきて、これまで何百回と繰り返した、いつもと同じ日常も戻ってきた。妙にテンションが上がり、途中のコンビニで、スポーツ新聞やお茶と一緒になぜかカルビープロ野球チップスを買ってしまうあの感じもそのままだ。だが、球場周辺の雰囲気は例年とは違う。 【秘蔵写真】名選手49人のヤンチャそうな高校球児時代。森友哉や吉田輝星に清原、藤浪からHRをぶち込んでニコニコの大谷、かわいい松坂、由伸にヘンテコ帽子の井口…。  もちろん東京ドームの正面ゲートは、しっかりと2020年バージョンの「THE TOKYO CULTURE」をテーマにした選手と東京名所がコラボしたデザインで統一されている。グッズショップには早くも前日の開幕戦で達成された巨人6000勝記念グッズが並ぶ。  だが、いつもはオレンジや黄色の野球ファンで溢れ返るこの場所が、試合開始直前にもかかわらず閑散としていた。もちろん正面ゲートにはシャッターが下りたままだ。

日常生活で叫んだら変質者だ。

 新型コロナウイルス感染拡大の影響で当初のスケジュールより約3カ月遅れて、6月19日に史上初めて無観客で開幕した2020年のプロ野球。東京ドームでは巨人対阪神の伝統の一戦が行われ、自分も久しぶりにテレビの前で開幕戦を迎えた。でも、寂しさよりも、喜びの方が強かった。  巨人が1点を追う7回裏に、吉川尚輝の逆転2ランが飛び出した瞬間、本当に久しぶりに「よっしゃああー!」なんてテレビの前で両手を突き上げ叫んでしまった。これが、プロ野球なんだなと思った。  だって、日常生活においてラーメン屋で食べた餃子が美味くて、唐突にガッツポーズかましたら完全に変質者だし、電車が時間通りにホームに来る度に「入ったーっ!」なんて絶叫していたら駅員さんにどこかに連れて行かれるだろう。でも、それがプロ野球では許される。たぶん我々は日常で足りない何かをプロ野球で補っているのだろう。

声もバットの音も聞こえてくる。

 そして、その無観客での公式戦がどんな雰囲気で行われているのか目撃するために、翌20日に取材パスを申請して、デーゲームが行われる東京ドームへ向かったのである。  関係者入口では、手の消毒をしてから入館時間と退館時間を記入し、検温をするシステムだ。それを問題なく通過すると、三塁側の記者席へ向かう(場内には「立入禁止」の札も多かった)。観客席ではオレンジユニフォームと黒色ボードを使って「橙魂(とうこん)スタンドアート」が実施され、一面オレンジ色に染まっている。いったいどれだけの手間と時間がかかったのだろうか。球場スタッフの事前の準備には頭が下がる。 「さあいこう!  さあいこう!」  試合が始まると、アウトをとる度、いや一球ごとにベンチの選手たちが拍手と声でグラウンド上のナインを鼓舞する。両軍ベンチの声はもちろん、先発投手・田口麗斗や岩貞祐太の投げた直後の咆哮までマウンドから聴こえてくる。  ボールがミットにおさまる音、バットでとらえる音。普段の野球観戦ではもちろん歓声にかき消されてこれだけの「生の音」は聴くことはできない。

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