ついに上陸したランドローバーのオーバーランダー! 新ディフェンダーで、ユニオンジャックに再び恋をする。
ランドローバーのオリジナルモデルであるディフェンダーが、新型となって復活した。もともとディフェンダーは車名としてランドローバーを名乗っていて、メーカーの代名詞でもある。 【写真を見る】横開きテールゲートとスペアタイヤを装備したフラットなリアビュー。 その歴史は第二次世界大戦時に使用されていた軍用ジープまで遡り、90や110といった車名はホイールベースの長さに由来している。2007年モデルまではリアのシートが対面型のモデルもあったぐらいだ。一度生産をやめた理由は、安全基準と排ガス規制に適合できなくなったからというごもっともな理由とは別に、メルセデス・ベンツのGクラスやジープのラングラーといったライバル社のクロスカントリービークルが市場を席巻。こうした動きに対抗するために、一気に競争力を上げなくてはならなくなったからなんだ。英国を出て新工場をスロバキアに設立し、新設計の完全フルリニューアルで新登場した。そして日本にも初上陸の運びとなったわけ。 まず実車を見た瞬間に、高さを伴ったそのボリューム感に圧倒されるよね。そりゃあ、昨年のラグビーワールドカップ決勝でともに登場した「リーチマイケル選手が普通の体格に見えたはずだわ」みたいな(笑)。レトロフューチャーな佇まいにして、オフロードタイヤを履き、オプションのシュノーケルやルーフキャリアを装備。前後の短いオーバーハングの仕様には、ハードコアなオフロードを踏破するギラついた自信がみなぎっている。
モダンに再構築された、最新の英国流オフローダー
素晴らしいのはフロントウィンドウをフラットにしたり、むき出しのドアヒンジを使わなくとも、クロスカントリービークルのタフネスさを表現できることを証明した点。現在のディスカバリーやレンジローバースポーツといった優秀な兄弟モデルの血統から、タフネスさを結晶化させた新車種を生み出すという意思の表れなんだよね。 新型のディフェンダーは静粛性が高く、挙動の鋭さはなくても2.2トンのボディを現代の交通の流れに乗せ、その流れを先導することもできる。今回は街乗りや高速道路、ワインディングと1000kmぐらい試乗したんだけど、最初こそパワーに物足りなさを感じたものの、効きのよいブレーキのおかげで思いのほか走りも楽しめた。そもそもランドローバーやレンジローバーの車種は(イヴォークを除いて)、オフロード性能が高すぎるゆえに、舗装路だと独特の収まりの悪さを感じるのね。オフロードタイヤを履いたディフェンダーにも同じことが言えて、それが「ランドローバーらしい味がある」と感じられたんだ。 この一定以上の速度になると現れる操作系の微妙なズレやロールが、不必要な速度を出させない走行ペースを生み出すのは間違いなくて、逆にそのペースをつかめば少ない燃料で、他メーカーのクルマとは一線を画す愉楽のドライブを体験させてくれる。 これは英国に馴染み深い旅の文化である、オーバーランディングのためのクルマという認識があるからかもしれない。オーバーランドとは野山を越え、川を越え、時には国境さえ越えて、野営をしながら長期間にわたって行われるクルマ旅のスタイルなんだけど、ランドローバーというネーミングもこの遠征旅行にインスパイアされているのね。「そんな旅をするなら時間はいっそ忘れたほうがいい」って感覚が、このクルマも脈々と受け継がれている気がしたんだ。
文:青木雄介