糸川耀士郎、『ダイヤのA』The MUSICAL主演は「めちゃくちゃチャレンジ」2年越しの上演にかける想い
2022年9~10月に「『ダイヤのA』The MUSICAL」が上演される。原作は続編となる「ダイヤのA actII」が週刊少年マガジンで連載中の同名野球漫画。2020年6月に上演が予定されていたが、新型コロナウイルスの感染症拡大を受け全公演中止となっていた本作。2年越しの上演で念願の主演を務める糸川耀士郎は、本作を「めちゃくちゃチャレンジだと思っています」と語る。2022年の上演が決まる前から投球フォームの練習を続けていたという糸川が本作に込める想い、また29歳の誕生日を迎えた彼の、30代を前にした抱負にも迫った。 【写真】糸川耀士郎の撮りおろしスペシャルギャラリー(全22枚) ■再始動したときのために、左投げの練習を続けていた ──主演作『ダイヤのA』The MUSICALが9月から上演されます。今作は本来であれば2020年に開幕予定でしたが、コロナ禍の影響で一度中止となりました。まず、2年越しの上演への想いを聞かせてください。 2年前、中止が決まったときは一度落ち込んだのですが、この業界だけでなく、それこそ高校野球とかいろいろなスポーツの大会も次々と中止になっていくのをニュースで見て「つらいのは自分だけじゃないんだ」と思ったんです。それで、『ダイミュ』が再始動したときのために、近所の公園で、(糸川演じる沢村栄純の投球方法である)左投げの練習をするようになりました。だから今回の再始動が決まったときはすごくうれしかったですし、2年間気持ちが途切れることなくいられてよかったなと思いました。 ──糸川さんが演じる沢村栄純というキャラクターの印象はどのようなものですか? 僕は、2.5次元舞台に出演するにあたって、キャラクターに持たせる説得力や、作品を大切にしている人が見た時の感動を、自分の技術不足で損ないたくないと思っているので、野球経験がほとんどない僕が、野球がテーマの作品の主人公をやるということに対して、正直「僕でいいのかな」という気持ちがあって。でも栄純は、周りに刺激されながらいろんな技術を身につけてどんどん這い上がって行くキャラクター。そんな栄純と一緒に成長していけばいいんだと思えたら、楽しみになりました。彼の負けん気の強さや明るさ、自分を信じて疑わない強さが、自分とリンクしましたし、栄純じゃなかったら僕はたぶん野球が題材の、しかもこんな人気な作品の役は受けられなかったと思います。 ──では『ダイヤのA』The MUSICALで栄純を演じることは、糸川さんにとっては大きな挑戦に? はい、めちゃくちゃチャレンジだなと思っています。歌やお芝居だけでなく、野球のフォームに関しても一流にしないといけないので。2年前のビジュアル撮影のときは球の持ち方すらもわからなくて、スタッフさんたちもすごく不安だったと思うのですが、2年間練習していたこともあって、今年の春に行われた野球のワークショップでは皆さんが「安心しました」と言ってくれて。僕も安心しましたし、周りの方も安心させられてよかったです。でもまだスタートライン。ここからもっともっと、野球ファンの方が見ても、『ダイヤのA』のファンの方が見ても納得できるようなフォームを作っていけたらと思います。 ■中学時代はバスケ部、試合の悔しかった気持ちを思い出した ──『ダイヤのA』原作のストーリーからは、どのようなメッセージを受け取りましたか? リアルだなと思いました。必ずしも勝てるわけじゃないし、魅力的なキャラクターでもずっと一軍にいられるわけじゃない。「努力だけじゃどうにもならないこともあるよな」と改めて思わされる。そんな中でも栄純は何も恐れずに突き進んでいく。見ている人が栄純たちを見て勇気をもらえるようなお芝居ができたらいいなと思っています。同時に、千秋楽の頃には「この先も栄純を続けていたい」と思えるくらい、自分のレベルも高められていたらいいなと思います。 ──野球の経験はほとんどないということですが、糸川さんは学生時代にバスケとサッカーをやられていたそうですね。スポーツに関して印象的な思い出を教えてください。 中学生のときのバスケの大会。この試合に勝てば、その次の中国・四国大会に行けるという大事な試合で、僕に大スランプが来てしまって。スターティングメンバーで試合に出ていたのですが、最後まで僕の調子が戻らなくて1点も取れず、結局2点差で負けてしまったんです。本当に悔しくて立ち上がれなくて、次の試合のために体育館で待機していた女子チームの前で、泣き崩れてチームメイトに抱えられながら帰るというめちゃくちゃダサい姿を見せてしまいました。人目もはばからずに泣き続けるくらい悔しかったですね。アニメ『ダイヤのA』を見ていたら、そのときの気持ちも思い出しました。 ──役者として栄純を演じることで、そのときの悔しさも報われそうですね。 はい。 ■背中で引っ張るというよりも、物理的に引っ張っていく座長に ──今作ではカンパニーの座長も務めることになります。どのような座長でいたいと思っていますか? 余裕のある座長でいたいですね。野球に関してはみんなに助けてもらわないといけない部分も多いと思いますが、座長の僕がいっぱいいっぱいになっていたらみんなを不安にさせてしまうと思うので、お芝居や歌で困っている人がいたら教えてあげたいし、ほかのことで悩んでいる人がいたら声をかけてあげたい。背中で引っ張るというよりも、物理的に引っ張っていく座長になりたいです。 ──共演者の中で、特に共演が楽しみな方はいますか? 廣野凌大くん。初共演なのですが、いろいろなところで名前を聞くので、どんな方なのか、内面をいろいろと掘っていきたいです。“いじる隙あるのかな”とか。あったらいじり倒したいですね(笑)。逆にめっちゃいじられているかもしれないですけど(笑)。どっちにしても仲良くなりたいです。 ──では『ダイヤのA』The MUSICALを楽しみにしている方へのメッセージをお願いします。 2年前に『ダイヤのA』The MUSICALの上演が決まって、でも中止になって。僕自身もつらい思いをしましたし、ファンの方もいろいろなつらい思いをした2年だったと思います。もしかしたら、この2年の間に、演劇を見ることをやめてしまった方もいるかもしれない。それほど大きく変わった2年でしたが、そんな時期を経て、僕も改めて栄純という役にぶつかっていきます。勇気を受け取ってもらえたり、エンターテインメントって素晴らしいなと思ってもらえるように、全身全霊でがんばっていきたいと思いますので、ぜひ劇場に足を運んでいただけたらうれしいです。 ■20代の目標のひとつは「忘れられない親孝行」 ──5月28日には29歳のお誕生日を迎えられましたね。29歳の1年はどんな年にしたいですか? 僕は普段から、自分に目標を課してそれを実現していくというのが好きで。20代のうちに実現したいこともいろいろとメモしているので、密かにそれらを達成していきたいと思っています。 ──そのうちの1つでいいので、どんなものか教えていただくことはできますか? 忘れられないような親孝行ができたらいいなと思っていて。今までそういう気持ちはあってもなかなかできなかったので、今年は実現したいですね。まだ具体的には決めていないんですが、実家が古いので、お風呂のリフォームとかいいなと思っています。 ──ご家族とは頻繁に連絡を取っていらっしゃる? はい。割と仲も良いほうだと思います。舞台も観に来てくれますし。特に母親は熱狂的に観に来てくれるのですが、そんな母親が知り得ない僕の情報を、父親がネットで拾ってきて母親に自慢しているそうで。その話を聞いて「かわいいな」と思いました(笑)。 ■「感想をもらうことが僕にとってのリフレッシュ」 ──素敵な関係ですね。糸川さんには、真面目でストイックなイメージがありますが、何かご自身の中でリフレッシュする方法などは持っているのでしょうか? 何だろう。プロとしてステージに立つ以上、妥協したくないと思っていて。『ダイミュ』でいったら、野球ファンの方、原作ファンの方が見ても、「野球に真摯に向き合って作ったんだ」と思ってもらわないといけないと思う。そういう意味で、自分にいっぱいノルマを課しちゃうタイプなので、毎回押しつぶされそうになるんです。だけど、上演していろんな感想をもらうと、報われたなと思えるんです。作品ごとにストレスが蓄積していかないのは、一回一回「よかった」と自分で思えるからだと思うので、そういう意味ではファンの方に見てもらうこと、感想をもらうことが僕にとってのリフレッシュなんだと思います。旅行とかも全然行かないんですよ。ご時世もあって、友達と飲みにいくことも今はほとんどないですし。だからお芝居でリフレッシュできているんだと思います。 ──仕事やお芝居のことを考えない時間はない? そう言われたら確かに、考えない時間はあんまりないかもしれない。考えないほうが不安になっちゃいます。たまにゲームはするんですけど、ゲームをしていても「このゲームをしている姿をファンの人が見てくれて、楽しんでくれたらいいのに」って思います。だからたぶん何をしていても仕事のことが頭にあるんだと思います。 ──それを解放する場が舞台で、ファンの方の反応がリフレッシュになっているということは、俳優が天職なんでしょうね。 そうなんだと思います。 ──では最後に、来年の30代に向けて「こういう30代になりたい」というような目標や構想があれば教えてください。 昔は「30代までにこういうお仕事をしたい」とかいろいろ考えていたのですが、最近は長いスパンで考えるようになって。「絶対にこういう仕事をしたい」とか「こういう役を掴みたい」というものはなくなりました。それよりも、いろんな役ができる役者になりたいですね。キラキラした役も、作品を引き締めるような役も、サイコパスっぽい役もできるような。「何にでもなれちゃう」と思ってもらえる30代になれたらと思っています。 ■取材・文/小林千絵 撮影/曽我美芽 ヘアメイク/望月光 衣装/MASAYA ・ジャケット 35200円 ・コート 32000円 ・パンツ 31900円 以上3点ともにTEKI(sunlady2@bp.iij4u.or.jp) その他スタイリスト私物