川内優輝が描く理想のマラソン大会は 九州の伝統的レースへの思い
プロランナーの川内優輝(あいおいニッセイ同和損保)が本紙のオンラインインタビューに応じ、市民参加型のレースが増え、伝統のレースが終了に追い込まれている現状を憂えた。びわ湖毎日マラソンが2月末に行われた大会を最後に琵琶湖畔でのレースに幕を閉じ、福岡国際マラソンも今年12月限りでの終了を発表。川内は歴史のある九州の大会存続に向けて独自の案も出した。 (聞き手・構成=伊藤瀬里加) 【写真】「生地が薄くなった」女子バレー久光の新ユニ 実際に選手が着用
「もったいない」
-これまで、九州でのレースにも数多く出場した。印象は。 九州は競技レベルが高い大会が多い。唐津10マイルロードレース、玉名ハーフマラソン、奥球磨ロードレース…。奥球磨は地域を挙げて盛り上がっているけど、唐津はあれだけいい記録が出て、いい選手が集まっているのに、あまり市民が興味がない。もったいないという感じがある。 -唐津10マイルのようなタイプの(トップレベルのランナーのみが出場する)エリートレースは近年、収益性の高い市民マラソンに形を変えるケースも増えている。 福岡などからもしっかりお客さんを呼び込んで唐津にお金を落としてもらい、「これだけ経済効果がある」と言うことができれば、市民マラソン化しなくても競技レベルを見てもらうことで面白いことができる。唐津もそうだし、そういう大会がいくつかある。 -昨年の唐津10マイルでは、ファンとの交流イベントにも参加した。 レース後にサイン入りグッズをプレゼントするじゃんけん大会があった。そういう形で盛り上げると、今までの日本の伝統的なレースがさらに面白くなって、いろんな人を巻き込んで、地域にも認められる。 -理想の大会は。 一部の陸上ファンだけでなく、市民との交流が増えるなら「伝統あるレースは大事にしていかないといけないよね」というふうになると思う。九州は伝統的なレースがすごく多い。ロードレースでも奥球磨、玉名、唐津とある。延岡西日本、別府大分毎日、福岡国際(取材後に今季限りの終了を発表)も伝統的ないいレースだと思う。そういうレースも大事にしてほしい。 -市民マラソンだけでなく、レベルの高いレースも必要。 日本全国、エリートレースをつぶしてフルマラソンという形が多かったけど、熊日30キロはエリートの部分は残して熊本城マラソンを一緒に開催した。ここもすごく独特。市民マラソンのおもてなしと、30キロのトップレベルの走りをうまく両立させた点では、他の地域も学ぶことはある。 -当面は“ウィズコロナ”でのレース運営が必要になる。 当面はうまく両立するしかない。現状ではトップ選手にPCR検査を義務づけプラス地域限定の形がいいのでは。一気に全国規模となるとハードルが高い。どんな形であっても、開催できる形で開催して、続けていくことが大事だと思う。