ドジャースvsパドレスで起きた「投げ入れ事件」に喝!【山本萩子の6-4-3を待ちわびて】第135回
続く7回。初回にホームラン性の打球をキャッチしたパドレスのプロファー選手が、スタンドのドジャースファンにボールを渡します。それに対してドジャースファンは「要らない!」と言わんばかりに、グラウンドへボールを投げ返します。 これが引き金となり、あらゆる場所からボールが次々と投げ込まれ、球場は騒然。試合は10分ほど中断され、スコアブックを片手に中継にかじりついていた私も、思わず「もう......」とため息まじりに頭を抱えました。 ただ、異様な空気とも言えるなか、7回1失点見事なピッチングを見せ続けたダルビッシュ投手の集中力が強く印象に残りました。 中断のあいだ、日本のプロ野球でもたびたび起きる「投げ入れ事件」に思いを馳せていました。 1996年。王貞治さん率いる福岡ダイエーホークスは開幕から低調が続き、過激なヤジや横断幕が掲げられました。5月に行なわれた試合中には、なんとグラウンドに発煙筒が投げ込まれます。敗戦後には選手が乗るバスがファンに囲まれ、今度は生卵が飛んできました。かの有名な「生卵事件」です。 バスの中にいた王さんは、この非紳士的行為に対し、「球場にわざわざ生卵を持ってきて投げるなんてこんなに熱心なファンはいない。将来優勝したときに一番喜んでくれるのはああいう人たちなんだ。彼らのために野球をしよう」と選手に向かって話したとか。王さんの器の大きさには、どのエピソードを見聞きしても毎回驚かされますね。 「アニキ」「鉄人」の異名を持つレジェンド・金本知憲さんは、カープ時代に広島市民球場で外野を守っていると、スタンドからBB弾で打たれたとか。番組でご一緒していた小早川毅彦さんによると、この球場は虫が多かったり、ロッカーが狭かったり、内外野の芝がガタガタだったりと、選手には過酷な環境だったようですが、まさかスタンドにスナイパーがいたとは衝撃でした。 話は戻りますが、タティスJr.選手はボールを投げ込まれたことについて、「これがMLBのショーだ。ドジャースファンは俺たちが勝ってることで少し苛立っていてみたいだけどね。これはMLBのプレーオフ。すべての瞬間を楽しんでいるよ」と、王さん顔負けの貫禄コメントを残します。 激しいヤジを受けながらも、結果を残し続け、どこか楽しんでいる様子まで見せた25歳は、まさにスーパースター。これからも目が離せない選手です。 とはいえ、グラウンドに物を投げ込むなどの行為は、選手やスタッフの安全が脅かされてしまうので絶対にやめましょう。ポストシーズンは選手だけでなく、球場に訪れるファンの盛り上がりも見どころのひとつ。そのファンの熱さこそ、私がメジャーリーグを好きになったきっかけでもあるだけに、今回の一線を越えた行為にはとても悲しくなりました。 熱くなる気持ちはすごくわかる!けれど、燃やすのは闘争心だけであってほしいなと願うのでした。それではまた来週。 構成/キンマサタカ 撮影/栗山秀作