「いきなりすき焼き!?」いきなりステーキ運営会社の新業態、老舗「木曽路」がマネできない巧妙戦略
いきなりステーキを運営するペッパーフードサービスが2024年12月6日、東京・新橋に新業態の1人すき焼き専門店「すきはな」をオープンしました。「1人ですき焼きを食べるなんて、美味しいの?」と思った方、侮るなかれ。このメニューには度肝を抜かれる「すごい戦略」が込められているのです。(百年コンサルティング代表 鈴木貴博) 【写真】絶品和牛の後にいただく「驚きの〆」、トッピングが神すぎる… ● 【実食】常識破り、驚きのすき焼きセット ひとくち食べて、至福の笑みがこぼれました。先週、新橋に新規開店したいきなりステーキのすき焼き新業態『すきはな』を体験したときの話です。極上の米沢牛を目の前ですき焼きにしていただきました。 このお店が開店する前の10月、私は本連載で、「コンセプトが素晴らしいが、非常識すぎて、そのコンセプトで開店にこぎつけられるのか?」と危惧していると書かせていただきました(詳細は『海原雄山もビックリ?「野菜ナシの1人すき焼き」いきなりステーキ運営会社の新業態が非常識すぎて目が離せない!』を参照)。書き手の責任として、実際どうだったのかを自腹で確認に伺ったのです。 コースの内容は、事前に一瀬健作社長がメディアで伝えていたとおり、極上の肉だけをすき焼きで提供し、通常のすき焼きとは異なり「野菜が入っていない」というコンセプト通りの提供でした。 先週のガストの記事でも書かせていただきましたが、私たち戦略コンサルタントは概して美食家です。大企業の経営者との会食が多いこともあり、若い頃からありとあらゆる美味しいお店を役得として経験させていただいています。 その立場で、僭越ではありますが、今週も70点を及第点として美食家の戦略コンサルタントとして『すきはな』の評点を先に公開させていただきます。 料理の満足度は90点。ビジネスとしての完成度は70点というのが私の評価です。
● ビジネスの完成度は70点? 先に一瀬社長に怒られないように弁明すると、新規事業で開業当初のビジネスモデルが及第点になるのは辛口の評論家の立場では稀なことです。社長自身もご不安な部分はあると想像します。 開店直後の賑わいが収まったあと、一転してお客さんがぽつりぽつりとしか来ない時期がひょっとすると長く続くかもしれません。 そもそも非常識なメニューですから、来店してくれても満足してリピートしてくれるかどうか?いつ黒字化できるのか?そしてこれからカイゼン点がどれだけ出てくるのか?新規事業の船出は課題だらけです。 ただ『すきはな』の最大の評価ポイントはひとくち食べれば美味しさがわかる点。いずれ後から口コミで評判はついてくるでしょう。 同じクオリティの高級すき焼きと比較すれば低単価のうえに、約30分で一回転しますから、軌道にのれば黒字化は早いはず。とはいえ運営するペッパーフードサービスは上場企業ですから、スケール面で店舗数を拡大できるかどうかが問われます。 これらビジネスの課題と評価についてはこの記事の後半でしっかりとお伝えします。 さて、グルメのビジネス記事ですからまず先に、味の紹介からいたしましょう。 ● 気になる味は?全セットを食べ比べ! 『すきはな』のお品書きは3種類。すべてすき焼きセットのコースで、牛肉のランクが3種類に分かれています。 一番上のブランド和牛すき焼きセット(税込3850円)はその時々で銘柄を変えるそうですが、私が食べた晩は米沢牛でした。 その次のランクが黒毛和牛すき焼きセット2530円で、一番お手頃なのが国産牛すき焼きセットの1980円です。 どのコースも目の前で焼き手の従業員の方が肉を焼いてくれます。調理は関西風のやり方で、まずざらめ砂糖を鍋に敷いて、その上に上質の肉を置きます。