「変わっちまったよ、お涼は!」ディズニーランドに学校を休んで通った紙チケット時代の思い出【坂口涼太郎エッセイ】
瞳孔は常に全開。せっかく&もったいない精神であきらめない
私のディズニーランドに対する挑み方はもはやアスリートのそれであり、「ちゃぶおど」で私が提言してきたあきらめ活動「らめ活」はディズニーランドにおいては非適用。何がなんでも全部乗る、全部観る、全部行く、全部食べるという飽くなき執念を抱き、せっかく&もったいない精神全開で過ごすのがルールなのである。 まだ紙のチケットが主流だった時代。乗り物に早く乗れるファストパスというディズニーランド内では紙幣よりも価値のあるパスを手に入れる為に、オープンと同時に友人達のチケットを全て預かり、「じゃあみんなはまずスプラッシュ・マウンテンに並びに行って! 俺はビッグサンダー・マウンテンのファストパス取ってくるから!」と言い残し、ディズニーキャストの皆様に注意されないぎりぎりのラインの競歩でひとりパークに消え、ファストパスを勝ち取ったあとみんなと合流し、スプラッシュ・マウンテンでびしょ濡れになったあと、「じゃあみんなはホーンテッドマンションに並びに行ってて! 俺はプーさんのハニーハントのファストパス取ってくるから!」と言い残し、びしょ濡れのままプーさんのハニーハントのファストパスを勝ち得たのち、栄養補給の為のポップコーンを数種類買って、みんなと合流。全員が揃うのは乗り物に乗っている間だけなのではないかというほどの別行動で、友人達からは「あんた、“私がいたらディズニーで全部乗れます全部観れます”みたいな仕事したら?」と半ば呆れられながら提案されるほどにディズニーランド内では常に鼻息をぼうぼうと荒げて時計とマップとショースケジュールと待ち時間を見比べ、今後の動向をスーパーコンピューターに負けず劣らず数億通りのパターンで予測し、瞳孔は常に全開。ミッキーも思わず私から目をそらしたくなるほど「ミ゛ッギィィィィーーーー!!!!!」とばっさばさ手を振りながら血眼で絶叫し、ディズニーという夢と希望の世界の全てに全体重をかけてノっていく。それが私のディズニーランドでの過ごし方。 特に私は小さい頃からパレードに夢中で、車を運転する時に必ず「ディズニー・ファンティリュージョン!」という今は無くなってしまったけれど一番好きなパレードの音楽をかけて、目的地までパレードするような気分で沿道にいる、というか、こちらに見向きもせず歩道を歩く人々に心の中で笑顔を振り撒きながらドライブしているんやけど、その「ファンティリュージョン!」の素晴らしさを思い出すとき、同時に私の体の奥でうっすらとざわつく子どもの頃の記憶があるのです。 〈後編に続く!〉 文・スタイリング/坂口涼太郎 撮影/田上浩一 ヘア&メイク/齊藤琴絵 協力/ヒオカ 構成/坂口彩
坂口 涼太郎